恋しちゃったんだ、たぶん(シュウハル)

「恋したことある?」っていつも聞かれる台詞。
そして私はいつも「ううん、ない」って答える。
そうするとみんなから「嘘、ないの!?」って必ず返される。
そう、私は恋をしたことがない。
恋愛ドラマや小説、少女漫画などは見たり読んだりするけれど、実際1人の男の子を“恋
愛感情で好き”になったことがないのだ。
もちろん主役のヒロインには憧れたりする。
でも、実際そんなことが起きたりしないのだ。
“胸が苦しくなる”とか“好きになってほしい”とかの感情がわからなくて。
私1人、残された感覚が襲ってくる。

「うーん、わからないかも!」

1人ベンチに座って背伸びをしながら呟いた。
別に女の子だからって、必ず恋をしなくちゃいけないとは言われてないけれど、考えてしまうのだ。
私だって、素敵な人と恋がしたいって。
無意識に考えてしまう。


「こんな所1人でどうしたんだい?」


ふいに上から聞き覚えのある声が聞こえた。
この低い声は…

「…シュウ」
「めずらしいね、ハルカが1人でいるなんて。サトシ君達は?」
「みんなは今買い物よ」
「ふうん…」

そう返事をすると、シュウは私の隣に座った。
私は少しだけ戸惑った。
シュウと2人きりでいるというのは初めてではないけれど、なぜか変に胸がざわついた。
そういえば、シュウの隣に座るのは初めてなのかもしれない。
変に意識してしまう。
いやいやいやいや!!相手はいつも人を馬鹿にして嫌味ばっかり言ってきてキザでムカつくあのシュウよ!?
なんで意識しないといけないの!?
私は頭をブンブンッと何回も振り続けた。
そんな私を、シュウは呆れていつもの台詞を言った。


「全く君は…美しくないね」
「美しくなくて結構!」


べーっと舌を出して威嚇した。
最初からそうだ。
この人はこうやって私を馬鹿にしてきた。
まだ実力のない私を罵って気分がいいのだろう。
ものすごくムカつくし、悔しい。
でも…まだあなたに追いつけない自分が一番悔しい。
気持ちがグルグルと回り出す。

「でも…」

ふいに、シュウの静かな声がした。
何だろうと思いゆっくりとシュウの方を向くと、


ポンッ


…えっ?


「最初の頃よりも断然美しいアピールで綺麗になっているよ。僕も負けていられない」


優しい笑みを浮かべてシュウはこう言ったのだ。
私の頭を撫でながら。
突然の讃美の言葉とその行動に、私の思考は一時停止した。
そしてなぜか、恥ずかしくなる。
私の顔が赤くなるのを感じた。
な、なななな何、これ?
急に体が熱くなるのを感じる。
今まで感じたことのない感情に、戸惑いが隠せない。

「え、あの、その…っ」
「…次に君らしいアピールを期待しておくよ」

そう言うと、シュウは立ちあがって歩き出してしまった。
私は呼び止めようとしたけれど、できなかった。
ただ呆然とシュウの姿を見つめるだけでしかできなくて。


「おーい!ハルカー!」


するとサトシ達が買い物から帰ってきた。
両手にたくさんの袋を抱えてきて。

「お、おおおお帰り!みんな!」
「た、ただいま…?」
「お姉ちゃんどうしたの?顔が赤いよ?」
「熱でもあるんじゃないか?」
「な、なななな何でもないかもっ!!///」
「「「?」」」

サトシとマサトとタケシはハテナマークを浮かべていたが、私は自分でもおかしいのは自分が一番わかっていた。
この異様な胸のドキドキは何!?
体がすごく熱くて、なぜかあの笑顔が離れない。
はぁはぁと息を整え、慎重に考えてみる。
胸がドキドキとうるさくて。
顔が赤くなって、熱くなって。
笑顔が…素敵と思ってしまって。
そう一つずつ考えていくと、


「…っ」


あぁ、そうか。
これが私がずっとわからなかった感情なんだね。
一度も体験したことのない、このキモチ。
私…シュウに、


「恋、しちゃったんだ…」


あなたに、恋したんだ。
初めての、小さな小さな“好き”。
私の…初恋。



「ちょっ、今恋って言ったよね!?タケシ!!言ったよね!?」
「あぁ、間違いない!!ハルカもやっと恋をしたんだな…!!」
「あぁぁぁぁ―――!!誰なの!?お姉ちゃんの好きな奴はぁ―――!!!」
「へ?ハルカ何をしたんだ?」
「ピカピ…」



サトシ達が騒いでいるのに全然気づかない私だった。







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