想い人(サトリラ)


「気持ちいいね、エーフィ」
「フィー」

エーフィがボクの膝の上でうつ伏せで寝転がっている。
そしてここはバトルタワー付近の森の中。
ボクのお気に入りの場所で、心が落ち着く。
エーフィを撫でながら、空を見上げる。
ここは静かな場所で、気持ちがいい。
おいしい空気、綺麗な緑が広がっていて、ポケモン達の楽しそうな声、暖かいお日様。
嫌なものを全て包んでくれる安心さがある。
そして……


「また会いたいなぁ…」


ボクの想い人との楽しい思い出の場所でもある。


君と初めて会ったのは、君がピカチュウと一緒にジョギングをしているところ、スピアーに襲われそうになった時だったな。
そこでボクがスピアーと話して落ち着かせて、それを君は「すごい」って言ってくれたのがことの始まりで。
それからすぐに君と仲良くなって。
でもまさか、君がバトルタワーの挑戦者だったとは。本当に驚いたよ。
ボクも一生懸命バトルして、勝って。
でも一番驚いたのは、君は自分の身を差し置いて自分のポケモンを守ったこと。
この時思ったんだ。

―君は本当に、ポケモンが好きなんだって。

ポケモン達に向けている笑顔がすごく眩しくて輝いていて。
胸がドキンと鳴った。
次の日も湖で遊んだり、花に話しかけたりしてすごく楽しい時間を過ごして。
胸がドキドキとうるさく鳴っていて。
そして気づいたんだ。
あぁボク…君―サトシが好きなんだって。
そうボクが一人思考していると、


「わぁ!?」


突然目の前が真っ暗になった。
いきなりのことだから、パニックになってしまう。

「だ、誰!?」

この暖かい感触は…人の手だ。
ポケモンの手ではない。
マサさんかな…?
でも彼はそんなことしそうにない。
ますますわからなくなってしまう。
すると後ろから、懐かしい声が聞こえた。


「だーれだ?」
「…っ!」


いや、まさか。
そんなはずはない。
だって君は…旅を続けているはずなのに。
ここにいるなんて…あり得ない。
だけどその声は…
ボクはゆっくりと口を開いて…君の名前を呼んだ。


「サトシ…?」


するとパッと目の前が明るくなった。
バッとすぐに後ろを振り返ると、そこには…

「…っ」
「よっ!久しぶりだな、リラ!」
「ピカ!」

相棒のピカチュウを肩に乗せて、君―サトシが立っていた。

「ほ、本当に?サトシなの?」

ボクの溢れた涙が止まらない。
だって君のことを考えていたら、君が目の前にいるなんて。
これは夢なんだろうか?
そう思い、頬をつまんでみると…

「い…たい…」
「ちょっ、リラ!大丈夫か!?」
「ピカピ!?」
「フィ――ィ!?」

サトシとピカチュウが慌てていて、エーフィは心配してくれた。
ボクはなんとか溢れた涙を拭うと、


「だ…って。サトシが、目の前…にい、るんだ、もん…」


思っているだけでも幸せで嬉しいのに、まさか目の前にいるなんて。
嬉しくて、泣いてしまう。


「俺さ…リラに会いたくて来たんだぜ?」
「ピカッ!」
「えっ…?」


サトシが少し頬を赤くして頬をかいていた。
ボクに…会いに?

「もう一回さ、この森でリラとピカチュウ達と一緒に遊びたくてさ。カントーに帰れる機会があったからここに来たくてさ!」

あの時のこと、サトシ忘れていなかったの?
ボクとの思い出を、楽しいと感じてくれてたの?
もうそれだけで…ボクは嬉しいよ。

「だからさ、今日はバトルなしで森でのんびりしないか?俺、リラと話したいこといっぱいあるし!」
「…フフッ。サトシがバトルしないなんて、本当かな?」
「なっ、本当だよ!?」
「ピカピカ」
「ピカチュウも頷くなよー!!」
「エーフィもそう思うよね」
「フィ――」

サトシは気まずそうにゴホンッと咳をついて、笑顔で言った。


「と、とにかく!今日はバトルはなし!のんびり過ごそうぜ!!」


そんなこと言うから。
ボクの心が嬉しさで一色になる。
やっぱりサトシは輝いて見えるよ。
だからポケモン達も君の元へ駆けつけて来るんだね。
だけど今は…
サトシを独り占めしてもいいかな?
今、一緒にいてもいい?
ボクの想い人――サトシを。


「うんっ!!」


だから笑顔で応えるね。
君と楽しい時間を過ごしたいから。

「じゃあ、あの湖に行こうぜ!」
「うん!」

ボクとサトシは湖へと歩き出した。
これから一緒に過ごす時間を楽しみにして。








人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -