指切り(シュウハル)


「はい、これ」

突然、彼から中くらいの1つの袋を渡された。
花柄の袋で、プレゼント用にラッピングされている。

「何、これ?」
「開けてみてよ」
「…?」

笑顔でそう言ったので、否定するわけないけど。
町で買い物をしていたところ、偶然彼―シュウに会った。
いつもはコンテスト会場で会うことが多いから、繁華街で会うのは本当に久しぶりだったので、そのまま2人で買い物をした。
雑貨屋さんや服屋さんなど…色んな所を回って。
1人で買い物に行くよりは、2人で行くほうが楽しいし。
私は楽しい時間を過ごせた。…けれど。
シュウは何1つ買わなかった気がするけどな…
まぁ見るだけでも充分楽しめるけどね。
疑問に思いながらも、私は丁寧に袋を開けた。
いつもの私だったら袋をビリビリと破って開けるけれど、貰い物、ましてやシュウから貰った物だ。
そんなことしたら絶対に「美しくないね」って言われるに決まっている。
開けるとそれは…


「うわぁ…!」


中身はピンク色の可愛らしいぬいぐるみ―エネコドールだった。
見ているだけで思わず頬が緩んでしまう。
それだけ可愛いから。

「どうしたの、これ!?」
「君がアクセサリーを見入っている時に偶然見つけてね。つい買ってしまったんだよ」

シュウも嬉しそうに微笑んでいた。
私はギュッと大切にエネコドールを抱きしめた。

「今日の買い物に付き合ってくれたお礼だよ」
「いいの!?貰っても!?」
「もちろんだよ。ハルカのために買ったのだから」

私のために。その言葉に少し胸がドキッとした。
こんなにも素敵なプレゼント、嬉しすぎる。
でも私は、あることに気がついた。


「私!シュウに何かプレゼント買ってない!!」
「は?」


思わずその場に立った。


「だって、こんなにも素敵なプレゼント私だけ貰ってシュウに渡さないなんて……そんなのいけないかも」


今日は自分の買い物しかしてない。
それなのにシュウは、私にプレゼントを買ってくれたのに…

「シュウ!今から好きな物買いに行きましょう!!私がプレゼントするから!!」
「い、いや、僕は…」
「いいから行きましょう!!」

グイッと腕を引っ張っても、なかなか進まない。
男の子って、こんなにも力入れないと進まないの!?
ギューっと引っ張っても、全然ダメだった。

「ハルカ、痛い…」
「あっ、ごめん!!」

思わずシュウの腕を離してしまった。


「でも私だって、何かプレゼントしたい…」


エネコドールを抱きしめてポツリと呟いた。
だってこんなにも素敵なプレゼントを貰ったのに、自分だけ渡さないなんて…
そんなの自分が許せない。シュウに何かをプレゼントしたいのに。
するとふいに頭に何かが触れた。
シュウの手だ。


「じゃあ、約束してくれる?」
「約束…?」
「そう」


顔を上げると、シュウの優しい笑み。
心が少しずつ落ち着いていく。

「今度また会って今日みたいに2人で買い物をして…次はハルカが僕にプレゼントを渡すっていうのはどう?」
「…結構待つよ?それでもいいの?」
「大丈夫だよ」

ニコッと笑うシュウに、私も笑顔になっていく。


「うん、約束ね!」
「あぁ」


ゆびきりげんまーん うそついたらはりせんぼんのーばす ゆびきった!
まるで昔に戻ったように楽しい指切りだった。

「じゃあねシュウ。絶対に約束守るからねっ」
「忘れないでおくれよ?」
「わかっていまーす!」

そう言い合って、私達は笑い合う。
今度あなたに会った時、2人で買い物しようね。
そしたらあなたに素敵なプレゼントを渡すからね。
絶対に忘れちゃダメよ?
あぁ、今度会うのが楽しみで仕方ないな。







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