[君/あなた]には敵わない(レイエ)
突然、頭が軽くなった。
それは、頭に被っていた麦わら帽子が、外れた感触で。
だけど現在、強風は吹いておらず、風で飛ばされたということではないのは確かだ。
そう頭の中で整理して、イエローは麦わら帽子を探し始めた。
しかしなかなか見つからず、もう一度辺りを見回すと…
「あははっ!」
「?!…え」
今度は後ろから、大きな笑い声がした。
その声は…何回も聴いている声だから、誰だかなんてすぐわかる。
「レ…レッドさん?」
「当たり」
ニッと明るく笑ったレッドが、イエローの真後ろに立っていた。
その右手には…
「あっ!ボクの帽子!」
今現在探していた、麦わら帽子。
そう言い、イエローは帽子へと手を伸ばすものの…
「…何がしたいんですか、レッドさん」
「ん?何が?」
「帽子ですよ。ぼ・う・し!ボクの帽子、返して下さい!」
「えー。やだなー」
「何でですか!」
イエローは懸命に麦わら帽子を取り返そうとするが、それをレッドは腕を高く上げ、取らせないようにする。
元々身長がレッドより低いイエローは、手が届くはずもなく。
はぁぁ…と諦めた溜め息を吐くと、レッドは悪戯が成功した子供のような顔を浮かべた。
それに思わずイエローは、顔をしかめる。
「…だから。何がしたいんですか」
「いやーさー」
帽子の取り合いで向かい合っていたレッドが、素早くイエローの後ろに行く。
なんだろう、ボクの髪に何がついているのかな?と思考していた瞬間―。
「きゃあ!?」
それは、頭の真上に束ねていた髪から、ヘアゴムが取れた感触。
そしてふわりと、一つに束ねていたサラサラの金髪が、ゆっくりと下りる。
―つまりイエローは、髪を下ろしている状態。
ほぼ毎日髪型はポニーテールなため、なんだか新鮮な気分になった。
「あの…レッドさん…」
"どうしてこのようなことを?"と、レッドに問い詰めようとした瞬間。
―レッドがイエローを後ろから、抱き締めた。
「レ、レレレレレッドさん!?」
突然のことに、イエローは戸惑う。
…どうしよう。…心臓の音が聴こえそう…っ。
それほどまでに、イエローの心音は激しかった。
するとずっと黙っていたレッドが、ようやく口を開く。
「イエローの髪下ろしている姿、見たくなったんだ」
低く、だけど凛とした声でレッドは言う。
耳元で囁かれるから、耳に吐息がかかって。
イエロー自身、体中に熱帯びていることはわかっていた。
「だ…だったら、ボクにそう、言えば、いいじゃな、い…ですか」
我ながら、声が裏返って震えている。すごく恥ずかしい。
そう伝えると、レッドはニヤッと意地悪そうな笑みを浮かべて。
「イエローの反応、見たかったし」
「っ〜!!!///」
なんだか、負けた気分だ。
あぁ、もう。さらに顔が赤くなって、体中が熱くなる。
レッドはというと、イエローの髪に、優しいキスを落としていた。
そのキスがくすぐったくて、恥ずかしくて、嬉しくて。
…不思議と、心が癒されて。
そう思っていると、イエローはあることを思いついた。
「レッドさん」
「ん?」
イエローは、レッドの腕の中、向かい合って…
ちゅっ。
レッドの左頬に軽く、優しいキスをした。
突然のことに、レッドの顔が赤くなってゆく。
「仕返しです!」
えへへっと、恥ずかしそうだが可愛らしいイエローの笑み。
それにレッドも流石に参ったらしく、羞恥で撃沈していた。
「ははっ。イエローには敵わないな」
「ボクもレッドさんには敵わないです」
そう笑いながら、仲良く手を繋いで二人は歩く。
―それは、ある日のトキワの森での出来事。
二人だけの、秘密の出来事。
*+*+*+
ようやく15巻を買い、イエローがレッドさんに女の子とバレてしまう場面、見れました!!
あの時のレッドさんの表情が……ごめんなさい、レッドさん;
それを読んで、イエローの髪をお題に書き書きしました。
勿論ポニーテール似合うけれど、髪下ろしたイエローも可愛いと思うんだ…!!((
あと、レッドさんがヘタレッドじゃないと思うorz
ここまで読んで下さり、ありがとうございましたm(_ _)m
(2013/5/9)