「ナマエ、僕、紳士になるんだ!」

ある日、いつものように私の足元にしがみつかれたお坊ちゃまが思い出したように仰られました。なんとも恐れ多いことですのでよしていただきたいと再三申し上げているのですがご主人様も奥様もにこにここちらを窺われるばかりでお坊ちゃまを止めて下さりません。困ったものです。私はとりあえず、お坊ちゃまの頭をそっと撫でて差し上げました。気持ちよさそうに目を細めていらっしゃいます。かわいらしい。

「恐れ多いのですけれど、お坊ちゃま、紳士になられますのでしたら女性の脚に突然しがみ付くのはいかがなものかと思いますわ」
「あ……ごめん!」
お坊ちゃまはたいへん素直でいらっしゃいます。これもご主人様と奥様の人柄の良さからですわ。思わず口許が綻びます。
「今日のおやつはお坊ちゃまのお好きなメープルクッキーです」
「ほんと!?」
そとみだけでも紳士になられようときりっと固めていらした表情を一気に崩されて、お坊ちゃまは高々とジャンプされました。私、感心いたしますわ、それほどのジャンプ力がありましたらきっとお坊ちゃまは素敵なスポーツ選手になれます。
「それならナマエ、君をお嫁さんにしてもお金に困らないね!」
「……まあ」
どうお答えしてよろしいのかわかりませんでしたのでジョースター卿と奥様に目線で助けを求めましたら、ついに卿は大きな声で笑い出してしまわれました。奥様もたいへんお上品に爆笑されております。
いつもの椅子にちょこんとお座りになったお坊ちゃまが、透き通った目で私を真っ直ぐ射抜いて仰りました。
「父さんと母さんとナマエと、あとダニーと僕とでずっと暮らすの!いいでしょ?ね、ナマエ」
思わず滲んだ涙をエプロンで拭いました。召使たるものご主人様方に涙や弱みをお見せするわけには参りません。
「あれ?ナマエ?泣いてる?」
「いいえ、お坊ちゃま……私、嬉しいのですわ……」
「ジョナサン、ナマエをいじめてやるのはそこらへんにしなさい」
ご主人様が明るい笑顔で仰ったのを元気よくお坊ちゃまが返されます。
「いじめてなんかないよ父さん!」
「ジョナサンったら、よほどナマエが好きなのね」
にっこりとお坊ちゃまが笑顔をこちらに向けられました。
「うん!」
「お坊ちゃま、クッキーが冷めてしまいますわ」
「あ、たべる!」
置いたお皿にすぐつけられようとした小さな手をご主人様がぴしゃりとはたきましたら、私を見上げて横目でご主人様の方を見てらっしゃいます。反抗してらっしゃるようです。思わず笑ってしまった私につられて、お坊ちゃまも楽しそうに笑われました。

20090616

敬語のゲシュタルト崩壊を起こしてやいないか不安です。まさかのショタジョナだったわけですが、一部らしさが出てればよいなと思いました


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