―――午後。暗殺チームアジトに、一通のファックス用紙が、ところどころ穴の開いた瀕死の電話機から苦しそうにひり出された。それが下へ落ちるより先にキャッチしたのは自称チーム一マメな男ホルマジオ。彼は用紙をなにも考えずに目だけ通しつつ、彼らのリーダーの部屋へ向かった。
「入るぜ」
ノックをし、コンマ数秒も待たないうちにホルマジオは、昼だというのに妙に暗い部屋へ足を踏み入れた。目に悪そうな白い照明に照らされた黒い瞳が、ちらと部下を見やる。リゾットはキイと古びた椅子を回し、ゆっくりと立ち上がった。大動物のようにのんびりとしたように見える動きは、ホルマジオの眠気を加速させた。
「どうした」
「ファックスだぜ。んーと……」
ホルマジオが送り主を確かめるより先にリゾットは音もなく近寄ってきて、しなやかに、かつ強引に用紙を受け取った。老人のような髪を軽く流して、形の良い鼻が小さく鳴る。軽蔑のではなくて、納得のそれだ。
「ジョルノからだ」
「ああ〜〜?あの坊ちゃん、今度は何の用だっつーんだァ?」
リゾットがするすると目線を下へ流してゆく。ホルマジオが横から覗きこむより先に、薄い唇が開いた。
「どうやら要人の保護らしいな」
「要人?」
「ホルマジオ、目標への接触を頼む。お前が適任だ」
「おっ?オレぇ?」
オーバーに動揺するホルマジオに向かって眉を吊り上げてから、指令書を手渡す。ホルマジオに渡ったファックス用紙に印刷された少女のモノクロ写真は、大きな棒キャンディをくわえ、なに?と言わんばかりにホルマジオを見つめていた。
2011/11/11
「……なあリゾットよ」
「なんだ?」
「誰だこの女の子」
「知らないのか?そんなでも一応要人だぞ」
「要人なのにアンタもそんなとか一応とか言ってんじゃねーか」