相談にやってきた二人組は、仲が良いんだか悪いんだかよくわからない人たちだった。なにやら金銭の貸し借りでモメにモメてわたしに仲裁を依頼しに来たらしいのだけれど、金利がいくらだとかいくら返済したとかいいやまだいくら残ってるとかア〇ィーレに電話すっぞとか、わたしの向かいで二人は二人の世界を作り出していた。付き添いの二人もすっかり呆れてしまって、フーゴはわたしにケーキのおかわりをすすめるわアバッキオはイヤホンを外そうとしないわ、わたしの相談室はすっかり無法地帯と化していた。ううむ、嘆かわしいような気もするが、目の前の二人の言い争いもちょっとはげしめのキャッチボールのようで見ていて楽しかったりする。観戦をつまみにケーキを頬張る。今のところ、ズッケェロという人の方が劣勢のようだった。

「だからよッ、オメーに貸したのは全部で二千リラなの!それまずわかってる?把握してる?」
「いーや違うね。オレが借りたのは三桁だもん。四桁はまずありえねェーッて」
「ちーがーうって!オレは金貸すとき一口千リラからなんだよ!なんで貴様にだけ甘んじてんだよ」
「しらねーよ。親友だからじゃねーの」
「ちっちげえよ親友なんかじゃねーし!バカいってんじゃねーぞコラ!」

 劣勢なのはズッケェロさんだが、嘘を吐いているのはおそらくサーレーさんだった。そのことは火を見るより明らかなのだけれど、ズッケェロさんの味方は蚊帳の外にいるわたし達だ。

「ズッケェロさんも、そんなにキチッとやってるなら借用書とか書かせればいいのに。O型?」
「いや、書かせたんだけどよォ〜〜これがおかしいことに……見あたらねんだよなーーッ数日前から……」
「…………」

 サーレーさんは、首を捻るズッケェロさんを横目で見ながら、フーゴに向かってケーキのおかわりを要求した。すみませんがもうありませんよと言うと、なんだあ、と残念そうに言ってから、おいそろそろ帰ろうぜ、と隣へ投げかけた。するとズッケェロさんは、そうだな、とか言って、結局すたすたと二人して部屋から出ていってしまったのだ。

「……あいつらタダでケーキ食いに来ただけじゃあねえか」

 アバッキオがイヤホンをしたまま呟いた。

2011/11/11



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