どうやら俺は相談者第一号らしかった。ナマエが嬉しそうにそういうと、フーゴが少し顔を赤らめた。オクテくんはこれだから。俺は嬉々として紅茶を用意しに行ったナマエの後姿を見送ってから、ぶすっとしたまままだ顔の赤いフーゴをちょいちょいと指先で呼んだ。

「なんです」
「いーからいーから」
「大体なんでアンタが来るんですか。相談したいことなんか無いんでしょどうせ」
「お前ね、俺がノー天気に毎日を過ごしてると思ったら大間違いよ。あそこのモザイクをどォーやったら消せるか一日悩んだこともある」
「またそんな……」
「ミスター!アールグレイとカモミールどっち?」
「アールグレイがいいなァー」
「フーゴは?」
「ぼくはいいよ」
「はーい」
「言い方がやっさしィ〜」

 フーゴが眉を顰めて俺のわき腹を肘で突いた。

「なあ、なあ。もっとこう積極的にいけよ!女のコってのはね、強く優しく掻き抱かれるとクラッときちゃうもんなのよ」
「……つ、強く優しく?」
「そー。強く優しく」
「強く優しくかつ官能的にですよ」
「わあああッ!」

 いつの間にかソファのうしろで仁王立ちしていたジョルノが大きな声で言ったもんだから、フーゴは慌ててジョルノのみつあみを引っ張った。あいたたた痛いですよフーゴと文句を言うのを無視してぐいと顔を寄せる。

「ジョルノ!お前なああ〜〜ッいるならいるで早く言え!」
「いつからいたか気になります?ずっとソファの背のこっち側にいましたよ」
「わあああ―――ッもう終わりだッ!」
「なんなんですか、人を悪魔みたいに」
「ちょ、どいてどいて〜こぼしちゃう」

 両手でトレイを持ったナマエがそろそろと俺たちの横を通り過ぎた。そろそろとテーブルの上に置いて、くるりと振り返る。

「あれジョルノいたの?」
「ああ、ぼくはダージリンがいいな」
「わかった!」
 
 ぱたぱたとまた消えてゆくナマエの背中を三人の視線が追う。振り返るとナマエの置いていったトレイがきらきらしているのでよく見てみると、水だった。ナマエは不器用なのだ。

「ダージリン、今きらしてるはずですからね。クソ真面目なナマエは買いに出るでしょうね。その間、フーゴ、ぼくと相談しましょう。ナマエと結婚するのはどっちか」
「けっ……けっ、けっ」
「えっジョルノ、え?おめーもそうなの?」
「おっぱい星人は黙っててください。フーゴ、手始めに財産の照会から始めましょうか。金銭面でどちらが有利か」
「結婚なんて早すぎるだろッ!」
「なんです、愛してるなら結婚を前提に交際するじゃあないですか。それともなんですか、体目当てですか。あーあー言ってやろ」
「や、やめろよッ!」
「じゃ、ちょっといってきま〜す」

 帽子をひょいと被って顔を出したナマエに、みんな揃っていってらっしゃいと手を振る。横目で見ると、フーゴだけは顔が真っ赤だった。


20110628

ジョルノは半分ふざけてる


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