「ナランチャがしっかりしないとダメですよ。年上なんだから」
「えっ、オレしっかりしてない?どこが?頑張ってんだけどな」
「頑張ってるのはよくわかりますよ。ぼくとしゃべってるときよかなんぼもお兄さんだ。でもやっぱりどこかマヌケなんですよ」
「うーん……」
「ナランチャ、お前悪口言われてんの気付けるようになれよ」
「ナマエはちゃんとしてるところもあるからそういうのは頼ってもいいですけど、やっぱりイザって時にもそれじゃあ……ねえ?ブチャラティ」
「まあ、そうだな」
「別にそんな、必死になって好かれようとしなくったって平気ですよ」

 口を挟んだジョルノに、一挙に五人の視線が注がれた。リラックスした格好で椅子に座り優雅に紅茶を楽しむボスに最初に物申したのは、犬と猫の犬のほう、アバッキオだった。

「チッ、知ったような口ききやがって」
「別に深い意味はありません」

 そう言ってくるりと向けられた意味深なジョルノの背中に、ナランチャが首を傾げる。

「どういうイミ?必死になるほど見苦しいってこと?確かにそうかもしんねーけどよォー……オレちょっと気になるとすぐなんかしたくなるんだよな〜〜小学生んときは好きな子にちょっかいかけるタイプだったし……」
「いたいた!そういうヤツ!オレもだけど」

 ミスタが言った後しんとしてしまった部屋で青少年たちはみな、感情はどうあれ一様に同じ少女の顔を思い浮かべていた。小さな頭の中にはどんな思考が詰まっているのだろう。角砂糖を転がして遊ぶナランチャは、ショートしそうな回路でなんとかナマエを考える。ナマエは今何を考えているのだろう?角砂糖がナマエに見えてくるような気がしてきたのは自分だけだろうか?隣のフーゴの顔をちらりと見上げると、フーゴも神妙な顔で角砂糖を見つめていたらしかった。
 静かになった部屋で大声を出すのがなんとなくためらわれて、そっとフーゴの耳に口を寄せる。

「なあ、今何考えてた?」
「……そういえばナマエは甘いものが好きだなって」

 なるほど。じゃあ今度はナマエに直接、聞きに行こう。そう決めたナランチャは角砂糖をフーゴのほうへひょいと放り投げて、軽い足取りで店を出て行ったのだった。

2011/05/25





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