「というわけだ」
言って顔をあげると、予想通りいまいちピンときていないらしいナマエがナランチャの肩に肘を乗せてリラックスしながら小首を傾げていた。聞いていたのだろうか。いや、聞いていなかったんじゃあないか。ナマエと交流を持つには根気が必要だ。そう言い聞かせてオレが口を開くより先に、ナランチャが首を突っ込んできた。
「なんだァ、変なヤツ!元々あのルカってヤツあんま好きじゃねェーんだよなァーッ」
「そうなの?」
「『チンピラァーッ』てカンジがしてさ!」
「そうだっけ?」
大げさに頷くナランチャの気持ちは解らないでもなかったが、オレ達だってそのチンピラと大した違いは無い。とぼけた顔でナランチャに相槌を打つナマエの名前を呼ぶ。
「え?何?なんだっけ?」
「歓迎されていないんだからルカにはもう近づかない方がいい。そんなに良い噂のある男じゃあない」
「でも本当に悪い奴だったらわたし一発殴られてると思うんだけどなあ」
「いーや、ナマエ、やめといたほうがいーってェーッ オレ今度ガムつけてやろ」
今回ばかりはナランチャの方がお利口らしい。殺傷能力の十分ある、自分専用のスコップを持ってるような奴にまともなのはいないのだ。ナマエにはもっと自分の身を守ることを覚えてもらわなくてはいけない。今度直々に護身術でも教えてやったほうが良いかもしれない。ナマエにそれを提案すると、ボーッとした顔で、うんと鼻を鳴らす。ナランチャが仲間に加わりたそうにしていたので、いつかは頼むよ、と言っておいた(実際、体格がナマエと近いからなかなか良いかもしれないが、少年らしいとはいえ、下心が丸見えだからそこがいただけないのだ)。
「ねえブチャラティ、わたしもっとお友達増やしたいなあ」
……能天気な世界になったものだ。ブチャラティは二人にわからないよう、そっとため息をついた。
2011/05/24