「何してんの?ルカ?」

 ルカが鼻をすすりながら顔を上げると、『あの』ガキがいた。
 ボスが変わったくらいからずっと『相談係』なんていう役職に就いてる、年齢は知らないが、ガキだ。まるで今流行のニートみたいな生活をしているこのガキは、毎日のように昼間っから街をうろうろうろうろしている。……とは言ってもその点はルカたちチンピラと大差なかったのだが、パッショーネのバッジを胸につけているくせに、まるでギャングという感じがしなかった。当然だ、『相談係』は一切、ギャングらしいことをしないのだ。この『相談係』が通りを歩いても住民はまるで『近所に住むお嬢さん』に挨拶するような軽い感じのままであったし、少女も決してギャングらしい振る舞いはしなかった。ルカは少女があまり得意ではなかった。

「…………」
「…………?」

 黙ったままグス、ともう一度鼻をすすったルカに向かって、ナマエが首を傾げる。

 何してるって、ボーッとしてたんだよ。見りゃあわかんだろうが。お前のその目はフシ穴か?涙目でそう訴えようとしたルカの隣に、ナマエがひょいっと腰を下ろした。ルカがナマエを苦手な理由は、怖いものなしな態度にあった。ルカだって一応ギャングなのだし、このスコップで一発殴るくらい簡単にできる。

「ごめん、なんにもしてなかったんだね」
「……」
「良い天気だなあ」

 今日は曇りだ。やっぱりこいつの目は腐っていやがるらしい、と一人で完結して、ルカは片手で額を押さえる。手のひらに涙がべちゃりと付いた。

「頭痛いの?彼女にフラれた?そういうところルカよくわかんないんだよね、いっつも泣いてるじゃん?」
「……」
「わたし相談係だよ!!」
「……」
「あっわかった。スコップが」
「うるせェェーんだよッ!ちったあ黙れねえのかァーッ」
「やっぱりスコップか……」
「ちげえッ!話しかけて良いなんて一言も言ってねえーぞ俺は!!どっかいけッ!」
「なに怒ってんの?」
「グスッ……」

 ナマエに、泣く子も黙るはずのギャングの威勢は効かなかった。きょとんとしてルカを見上げて、怪訝そうな顔をしている。ムカつく顔だ。我慢ならなくなったのでルカは、傷跡のある目の下あたりをひくひくさせながら『このバカを手なずけているブチャラティにでも文句を言おう』と決めて、突然立ち上がったと思ったら全速力でナマエから逃げ出したのだった。

20100101




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