(*鈴美ちゃん生きてる設定)


露伴ちゃんがいつにも増してイラついていたから、わたしはどうしたのか聞いてみたいのを必死にこらえていた。昨日からだ。でもやっぱりおおよその見当はつく。わたしは難しい顔で昆虫図鑑を眺める露伴ちゃんの様子を窺いながら、本質とはまったく関係のない、当たり障りの無い話題を振ることにした。
「ねえ露伴ちゃん、そんなに虫見て、楽しい?」
「楽しく見えるのかい?」
「あんまり見えないわ」
「あんまり?日本語の使い方間違ってるぜ」
ああ、やっぱり地雷、踏んじゃったか。わたしは、露伴ちゃんのファンから届いた綺麗な花束の入った花瓶の中の水が綺麗かどうか確かめるフリをしながら露伴ちゃんから目を逸らした。ううん、分かってたの、こうなることくらい……イラついてる露伴ちゃんってホントに、足の踏み場の無い地雷原だから。隙間、ないから。分厚い図鑑をばたんと閉じて、長い脚を組んだままの露伴ちゃんは椅子をきいと鳴らしてこっちに体を向けた。両手で図鑑を首のあたりまで持ち上げて振り回しながらまくし立てる。
「いいか、楽しいってのは表情の変化や体の動きや、とにかく体温の上がるもんだ。そうだろ?表情筋が吊り上がって、興奮する。さっきの僕はそんな顔してたか?してなかったじゃあないか。体温だって普段よりむしろ低いくらいだろうな。悪いが僕は蛾の幼虫の解剖図を見ても興奮しない。だいぶ前に目が腐るくらい見たからな」
初めて見たときはそりゃあもう興奮したのねきっと。目をらんらんと輝かせる露伴ちゃんを想像しながら肩を竦める。
「なんだよ。文句があるなら言えよ。おい」
「あ、名前ちゃんにジュニアの散歩頼んだの思い出しちゃった〜。そろそろ帰ってくるかしら?」
すうっと顰めていた眉を元に戻して息を吸った露伴ちゃんが、図鑑をまたそっと机に乗せて眺め始めた。「さあ、知らないね」と言った口は頬杖で歪んでいる。必死に平静を取り繕おうとしちゃうあたり、露伴ちゃんは結構抜けてると思う。他人のことはよく見えてるのに、自分に関してはまったく分かってないのよね。露伴ちゃんに喧嘩で負けそうになったら、名前ちゃんの名前を出すのがいちばんだ。


20090927


ジュニアってのはアーノルドの息子犬のつもりなんだよ(^0^)/



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