溜息をついていたら、突然由花子ちゃんが寄ってきて良いエステを紹介してあげるなんて言うものだから私は驚いた。いまどきの高校生はエステになんか行くのね。
せっかく誘ってくれたし断る理由も無いから、きびきび歩く由花子ちゃんに黙ってついて行く。『シンデレラ』は表通りに面してちゃんとあった。こんなところあるの、知らなかった。からんからんいう音と由花子ちゃんと一緒にお店に入る。良い匂いがした。
「あら……由花子さんじゃない。……その人は?」
「わたしの学校の先生よ」
「あ、初めまして」
「初めまして。……お客さんつれて来てくれたの?珍しいわねぇ」
「場合によってはね。カウンセリング次第よ」
美人二人に完全に気圧されてドアのすぐそばで立ちすくむ私の手を由花子ちゃんが引く。薄く微笑む……辻さんの真ん前に座らされて、私はますます体を固くした。
「先生、何か悩みがあるんでしょう?」
「え、悩み?」
「そうよ。最近授業が前にも増して上の空だわ。康一くんも心配してたし……このまま授業が覚束ないとまた康一くんの成績が落ちちゃうから」
「あー……うーん……そうだよね……ごめんね……」
「お客様、カウンセリングは無料で行ってますの。……由花子さんの紹介なら……私、一層ちゃんとご相談に乗るわ」
「あ……ありがとうございます」
そうは言っても、何について悩んでるのか打ち明けた所で自分の気持ちが楽になるとは思えない。かえって、打ち明けるまでの緊張が辛いくらいだ。
私が口ごもっていると、由花子ちゃんがぐいっと綺麗な顔を近付けてきっぱりと聞いた。
「結局、先生、あなた岸辺露伴とアホの仗助とどっちが良いの?」
「え?」
予想外の質問に開いた口が塞がらない。辻さんは相変わらず綺麗な蛇みたいな顔でにこにこしているし由花子ちゃんは顔が近い。膝に抱えていた鞄を胸のあたりまで手繰り寄せて、せめてもの障壁がわりにしようとした。


20090819


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