玄関のドアを開けるとそこには外国人のような男の子が立っていた。高校生くらいに見えなくもないけど外国人は大人びて見える(仗助くんもそうだ)から自信は無い。男の子の白い髪とコートのせいで彼がアニメかなにかに出てくるキャラクターのようにも見えた私は一瞬固まった。
「こんにちは。名前」
「え?あ、うん?」
どうして名前を知ってるのか、あ、表札か、いや表札には苗字しか書いてないはずだ。パニックになった私はしかし男の子が妙な変態には見えなかった(見た目で判断しちゃいけないんだよね本当は)し、急いで扉を閉めてロックをかけるなんてことはしなかった。男の子にまず何から尋ねるべきか思案しながら大きな瞳を見つめる。私が口を開くより先に男の子が懐から『紙』を取り出した。
「綺麗だったから名前にあげようと思ってね。盗って来たんだ。あ、安心してくれよ、ごまかしたからさ」
「…………何を?」
「ほら、受けとって。ボクはもう帰らなきゃいけない」
『紙』が『綺麗だった』?意味を把握できないまま、男の子が差し出した丁寧に四つ折された紙を恐る恐る受け取る。満足げに微笑んだ男の子がくるりと軽やかに踵を返して鼻歌を唄いながら離れていった。白い後ろ姿が消えてしまってから、非道徳的な行為を容認してしまった事に気が付いて息を呑んだ。どこへ消えたのか、首をのばして覗いても男の子はもういない。
「……新手の勧誘かな」
宗教か何かの。そう思いながらドアの内側へ引っ込んで、紙をぱたんぱたんと開いていく。

「わっ」
思わず紙――もとい、突然現れた花を取り落とした。薄いピンク色のガーベラが……三輪。紙にぴったりと挟まれていたはずなのに、細い花びらはふさふさとして綺麗に開いている。混乱しながらそろそろと花を拾うと、密閉されて溜まっていたらしい香りを一気に吸い込んでしまって、噎せ込んだ。


20090815




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