ナマエと共に生きてもう百年程にはなるのだろうか。自分が自棄になっているのは重々承知だったがそんなのはどうでも良い。こちらへ向かっている承太郎やジョセフの事も今だけはどうでも良い。

ナマエがこのDIOを生物レベルで見下している事は知っていた。昔からジョースター(や、その『愉快な仲間たち』)に仇なす者には生意気な態度を取る女だった。

いつだって殺せる。『世界』で時を止めてその間にあの小さな小さな頭を指先で弾いてやれば良いだけだ。若しくは昼間、時を止めている間に窓から外へ放り出すか。そうすれば簡単にあの忌ま忌ましい顔は崩れて無くなるのだ。
が、そうはしない。あいつにとって生きる事がどれだけの苦痛かというのを自分は分かっている。憎くて仕方が無い『ディオ』に首から下を支配されて自分を犯すジョナサンの死体だとか死ぬ勇気の無い自分だとか、そういうのを見つめて沸き上がる下らない感情を、ナマエはおよそ一世紀生きてもまだ抱いているらしいからだ。

まったく、下らない。頬を引っ掻いた傷が塞がるのを見て遊びながらナマエの肩にかじりつく。じわりと生温い血が体中に行き渡る。日に当たらない、わたしと同じ青白い首筋を剥き出しにしてそれこそ美術品のようにナマエはただただ横たわっていた。天井を見つめる瞳をちらちら泳がせている。

「ナマエ、こっちを見ろ」
目だけを動かしてナマエは言う通りにした。歯形の付いた肩を挟んでわたしとナマエは目を合わせる。

「明日あたりにはジョースターがこの屋敷を突き止めるだろうな」
「さようで」
「このDIOの寝首をかくなら今のうちだぞ」
「そうでございますね」
「可愛いジョナサンの可愛い子孫を守りたくは無いのか?」
「ふふ、あなたは負けるわ、DIO様」
脈絡の無い言葉に眉を顰めると、ナマエはにっこり微笑んでわたしの肩に手をのばした。体を起こしたと思ったら腰を曲げて、ジョナサンの首筋の……痣のあたりに顔を近づける。
「負けるわ。死ぬのよ。ジョナサン様の血を受け継いでいるんだもの、ジョセフと承太郎はこの肉体みたいにどうやったって生き残るに決まってる。ディオ、私とこうやって夜を過ごすのも最後ね」


「………………」
くつくつと自分の喉の奥から笑いが漏れた。何が面白いのか。昔から口答えをしなかったナマエがとんちんかんな事を言ってこのDIOを怖がらせようとしているからか?それとも、痣に歯を立てたナマエの行動が全く矛盾していたからか?
「……明日の夜は、貴様の血を一滴残らず吸い取ってやる」
「とても、楽しみですわ。DIO様」


20090704






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