あのナマエとかいうメイド、得体が知れない。
テレンスの奴が妙に入れ込んでるようだから、ということはつまりロクな女じゃあないんだろう。あいつが惚れる女ってのは往々にしてアブない女だ。ポーカーはやりたがらないくせにそっちのギャンブルはやるんだから、困った弟を持ったもんだとわたしは思っている。

「おいテレンス」
「なんだ」

嫌々わたしのコーヒーを煎れるテレンスに座ったまま体を向ける。こちらにちらりとも目を向けずに、粉の入った袋を振った。インスタントなのはわたしへの嫌がらせだ。反抗期はまだまだ続いているらしい。

「どういう女なんだ」
「なにがだ」
「あのメイドだよ」
がちゃん、と乱暴にカップを置いて、テレンスは欝陶しそうに、だがやっとわたしを見た。
「まさかまた」
「違う!そうじゃあない!横取りしてやろうなんて思ってないさ」
「……………じゃあどうしてそんなこと聞くんだ」
「お前が心配なんだよ。兄心だ」
「へえ、そりゃ興味深い」
「嘘じゃない。スタンドで見てみろ」
「少しは黙ってられないのか?」
どん、と置かれたカップの中で、コーヒーの水面が揺れる。

……兄の出る幕は無いらしい。薄いコーヒーを少し含みながら、部屋を出て行く弟の背中をちらりと見た。


20090703

お兄ちゃんゆ……め……?



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