ぼくたち兄弟はナマエさんが怖い。
DIO様とどこか似た雰囲気を持っているし、なにしろ吸血鬼っていうのは血を吸うってのをお兄ちゃんから聞いた。トト神を読んでも何故かいつもナマエさんは漫画に出てこないし、とにかく得体が知れなかった。

そんなナマエさんがある日ぼくたちを尋ねて来た。もちろんぼくたちはびっくりして口をきけなかったのだけど、だからってナマエさんは嫌な顔をするわけでもなく、本を一冊ぼくに向かって差し出した。

「マンガばかり読んでいてはいけませんから」
怖くて受け取れないぼくの代わりにお兄ちゃんが厚い本を恐る恐る取ってぱらぱらめくってから、ぼくの顔をちらりと見る。
「……あんたの本かい?」
「ええ。読み終わったので。ご本はお好きですか」
「あ、ああ」
「良かった。それでは」
相変わらずの冷たい声でナマエさんは言って、さっさと踵を返してしまった。咄嗟に呼び止める。
「あ、あああああの」
「…………」
「あ、あり……あありがとう」
「…………………」
ちらりと振り返ったナマエさんが、ちょっとだけ微笑んだ。ばたん、と扉が閉まって、ぼくとお兄ちゃんは顔を見合わせる。

「……案外いいヤツなのかもなあ」
「そ……そうだね」

お兄ちゃんから本をうけとってめくってみると、字が外国語で書いてあって読めなかった。ナマエさんにお願いしたら読んでくれるかな。


20090701



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