イギーの奴は名前にだけは懐いている。
動物好きのアイツはすぐにイギーを抱き上げる。不細工な犬を膝に乗せてご機嫌の名前の手をイギーがべろべろ舐めた。イギーが女好きなのかそれとも名前がコーヒー味のガムを際限無くやるからなのか定かじゃあないが、とにかく奴は名前にべったりだ。
どこか犬らしからぬ雰囲気のある犬だからか知らねえが、どうにも名前にくっつかれるのは気持ちの良いもんじゃあない。かと言って引きはがそうとすれば鋭い爪を名前の短いスカートに引っ掛けて抵抗してくる。名前が俺を睨んだ。
「やめてよ承太郎!イギー嫌がってるじゃない!わたしも痛いし!」
イギーが猫撫で声(犬のクセに)を出して名前の腹の辺りに頭を擦り寄せた。その頭を、よしよしひどいね、とか言いながら撫でている。うっとおしいな、こいつら。
「ね!承太郎ひどいよね!どうして嫌がらせすんだろうね!」
犬は耳が良い筈だ。名前のデカい声は苦にならないのか?さっさとどきやがれと鍔の陰、名前には見えないようにイギーを睨む。
犬がひ弱な声を出した。
「承太郎!」
こいつ、いつかブチのめしてやるからな。
20090629
イギーゆ……め……?