ねえねえジャン、と隣に座る名前が俺の顔を覗きこんだ。舗装の甘い道路のせいで車は絶え間無く揺れる。バックミラーの中で花京院と目が合った。
「なんだよ?」
「そのピアスかして!あ、典明も!」
 アヴドゥルと承太郎が荷台に乗っているから、車内はいつもよりちょいと広い。名前は大きく前の方に身を乗り出して、花京院の顔も覗いた。ジョースターさんがハンドルから片手を離して名前の肩を掴む。
「おいおい名前、危ないから座りなさい」
「あ、ジョセフも帽子!」
 狭い車内じゃあ名前の声はよく響く。ひょいっと帽子を取られたジョースターさんが顔をしかめた。名前は花京院のピアスにも手をかける。
「いたっ、痛いぞ名前、今外すから大人しく座っててくれ」
「早く早く!」
 ぼす、と後部座席に後ろ向きに飛び込んだ名前の肘が鳩尾に入った。あ、ごめん、あはは、と脳天気に笑う。
「………………」
 花京院のチェリーっぽいピアスをご機嫌で受け取る名前は、腹を抱える俺のピアスまでちぎりにかかった。鳩尾の鈍い痛みよりそっちの方が勝ったので、俺も慌てて名前の手首を掴んで距離をおく。
「はやくはやくー!」
「あーわかったわかった!」
 ハートを半分ずつ小さなてのひらに乗せてやると、喜々としてそれを花京院のと混ぜて両手で包み込んだ。後ろの窓からアヴドゥルが何事かと覗いてる。
 かちゃかちゃかちゃ、と音を立てて名前か蕾のように膨らませた両手を振った。

「じゃあこれ、私が違うの引いちゃったらジャン罰ゲームね!あ、帽子被らせて!」
「罰ゲームう?」
「アヴドゥルとキスね!」
 花京院とジョースターさんが一斉に噴き出した。聞こえないらしいアヴドゥルは興味を失ったらしく何やら承太郎と話し始めている。
「……ていうか、形触れば分かるだろすぐ!」
「わかんないよ!似てるでしょ!」
「似てねええだろ!」
 相変わらず笑顔を輝かせている名前の頭に、花京院が帽子を被せてやった。『頑張れよ』みたいな目で俺を見てきやがる。
 帽子を目深に被った(ちょっと緩いらしい)名前が、目をつむった。歳の割に幼い指先が、ピアスの形を確かめるようにそわそわと動く。俺とアヴドゥルにキスさせる気満々らしい。

 シェリーと同じくらいの歳の名前を甘やかしてやりたいのは山々だが、なんとしてもこの状況は阻止しなくっちゃあいけない。俺は名前の手首を掴んだ。目をつむったまま暴れる名前。ジョースターさんと花京院が笑って、アヴドゥルは後ろでまだ怪訝そうな顔でこっちを覗いていた。


20090623

やまなしおちなしいみなし


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -