少女は神の前にひざまずいて祈っていた。ぼんやりした記憶の彼方に残る三人の男を思い出しながら。彼らの名前はなんだったろうか。それともあれは夢だったのだろうか。神は答をくれはしない。固く結んだてのひらもだ。いくら悩んでも悩んでも、三人とどのようにして出会ったのか、過ごしたのか、また別れたのか、思い出す事は適わなかった。

少女は牧師に軽く会釈をして教会を出た。

外はもう暗くなっていた。どのくらい祈っていただろうか。背後の十字架を見上げながら考える。

黒い男、三人のうちの一人。彼についての記憶が、一番くっきりと残っていた。どうしてかは分からないが、声だってあの黒い瞳だって思い出すことができた。絵の具をぽんと渡されて、色を作れと言われたって平気なくらいだ。烏の羽根の色でも無くインクの色でも無く、なにかもっとたくさんのものが詰まったようなあの黒。今、彼はどうしているのだろうか。まだあの目は黒いままだろうか。不思議とまだどこかで生きているような感じのする彼らへ向けて無事を祈るナマエは、きょうで十八になる。

空を見上げて、白く瞬く星を数える。
「いち、に、さんし。」
星に照らされた夜空がちょうどあの黒に似ていて、ナマエの口元が綻んだ。


20090618


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