ひょいと病室を覗くと、まるで王様みたいに踏ん反り返るシュトロハイムがいた。私に気が付かないで、軍属のナースを顎で使っている。せっかく来てやったのに、元気そうだからこの調子だとすぐに戦線に復帰してしまいそうだ。機械仕掛けの体が、少し動くたびにぎしぎしいっている。ずかずかと病室に足を踏み入れると、ぎょっとした顔でナース達がこちらを見た。

「元気?シュトロハイム」
「なんだ……いつぞやのあのムカつくイギリス人か」
「せっかくお見舞いに来てあげたのにその言い草はないんじゃなくて?」
どん、と鉢植えをベッドサイドに乱暴に起きながら私は言った。緑色の葉がゆらゆら揺れる。受け皿に溜まっていた水が跳ねたのでシュトロハイムが嫌な顔をした。

シュトロハイムはナース達を追い出した。『あの大佐』にタメ口なんてどういう立場の人間なのか、彼女たちはずっと気になっていた様子だったけれども、なんてことは無い、ジョセフにつられて馴れ馴れしくなってしまっただけ。偉い人って聞けば私だってそれなりに改まるけども、そうしなくたってシュトロハイムには不満はなさそうだったのでなんとなくこのままだ。

私が嫌味で持ってきた鉢植えをちらりと見て、シュトロハイムはむっつりした顔をこちらに向けた。
「ふん。何の用だ、ん?笑いに来たのか」
「ははー誇り高きナチスドイツの軍人がベッドから起き上がれやしないんですかァ」
にやにやして言うと、シュトロハイムのこめかみの血管がすうっと浮き上がった。このドイツ人はプライドが高いから、ちょっとイジくるとすぐキレる。……最近私、ジョセフに似てきたかしら。
「まあでも、今日はちゃんとお礼を言いに来たのよ」
シュトロハイムはじろりとこちらを睨んだ。私は肩を竦めて続ける。
「ちょっとは見直したの、死ぬ気だったんでしょ。ナチはあんまり好きじゃなかったけど、まあ、ゼロが三くらいにはなったわ」
「この体が動くようになったら真っ先にお前を殴りに行ってやるからな。楽しみにしてろよ」
くすくす笑う私を睨みながら、シュトロハイムはまんざらでも無い様子だった。

20090618

駄目だ難しい……


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