「この紅茶、おいしい」
「それはよかったです」


かちゃ、
受け皿に繊細なカップを乗せる。向かいに座る鯨木もゆっくりと薫りを楽しむように陶器を傾けた。

臨也は背もたれに体重を預けると、横の窓から外を見上げた。凪いだように穏やかな空に、薄い雲がゆっくりと流れている。

「今日は天気がいいね。寒くもないし、暑くもない」
「はい」
「静かな時間だ。…不思議だな、鯨木さんのいるところは、時がゆっくりとしたはやさで進んでるような気がする」

ただ思い浮かんだことを呟いている、という風の臨也に、鯨木も無表情ながら微かに穏やかな雰囲気を滲ませて、同じように空をちらりと見上げた。

「このクッキーは、食べてもいいの?」
「勿論です。好きなだけお召し上がりください」
「ありがとう」

間に置かれた小さな卓の上に、洒落た器に詰められたクッキーがある。見たところチョコや抹茶もあり、質のいいバターがたっぷり使われていて美味しそうだ。

さく、と齧ったクッキーはやはり卵やバターがたっぷり使われていて、ほどよい甘さと共にうっとりとしそうな口どけが広がる。臨也は窓枠に切り取られて浮かぶ、柔らかに輝く青い空を見上げて、ただ単純に、いい天気だなぁ、と思った。




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