赤也のするテニスはあまり好きになれない。あれは人を傷付けるテニスだから。…だけど勝ちにこだわる気持ちも分かる。それは立海のテニス部の部員としての、誇りや気高い伝統とか。そういうのを色々背負ってる赤也は、結果に重きをおつのだ。勝つことに。だから、私も彼を精一杯応援していきたい。だけどー…


「先輩先輩!どうッスか今の試合!オレ相手に一点もやりませんでしたよ!」
「ああ、うん。見てたよスゴイネ」
「何で棒読みなんスか!」
「いや…だって相手レギュラー陣じゃない子じゃん」


よりによってフルボッコかよ。デビル化までして…。「いや全力で叩きのめすのがオレのモットーなんで!」と笑顔で言い放つ赤也に頭が痛くなった。いや…そこは「全力で挑まないと相手に失礼じゃないですか(キラリ)」的な発言で良かったんじゃね?最早あんたそれ、自己中だよ


「?先輩?」
「…まあいいや。赤也、」
「何スか」
「あんたちょっとこっち側に来て」
「へ?」
「その…フェンス越しじゃ渡せないからさ」


ほら、と持っていた真新しいペットボトルを見せつける。それに赤也は少し驚いたように目を丸くし、「先輩!先輩って本当ツンデレッスね!」ときらきら笑顔で一言。フェンスの向こう側にいる私の元に来るべく、バタバタと赤也は走る。…別にデレてねーよ。お前が「先輩!今日の試合見に来て下さい!先輩にカッコいい姿見せてやりますんで!あ、勝利はもちろん先輩にプレゼントするッス!」とか言ってくるから、お返ししたかっただけだし。(というか、支離滅裂でちぐはぐな誘い言葉が赤也らしい)


「ー…おい、お前大丈夫か?」
「あ、真田副部長…」
「随分こっ酷くやられたもんだな…仕方ない、保健室で治療してもらえ」
「は、はいっ」
「……」


ー…赤也のテニスは必ず誰かを傷付ける。だけど、そんなこと赤也だってしたくてしたいわけじゃないと思う。人を傷付けて何も思わない人間なんていない。必ず心のどこかで苦しんでるはず…。少なくとも、普段の赤也はそんな非道なやつじゃない。擁護するわけじゃないけど、たぶん仕方ないんだ


「(……不器用なやつ、)」


勝ちにこだわるあまり、自分が傷付いてることにも気付いてないんだから。…何て言うのかな?私はそんな赤也のやつを支えたいって思うんだ。私はそんな赤也のやつを好きだから


「先輩!」
「あ、はい。飲み物。お疲れ様」
「どうもッス!」


私の元へ走り込んできた赤也にペットボトルを渡す。彼は相当喉が乾いていたらしく、一気にごくごくと飲み干していた。「…そんなに飲むと、後の練習に差し支えるよ。お腹たぷたぷになって」と注意すれば、こくこくと頷かれた。何だこれ、私はお母さんか


「ぷはっ…あー運動した後に飲むお茶は美味いッスね!」
「そら良かったね」
「これがおーいお茶じゃなくて、爽健美茶だったらもっと美味いんスけどね!」
「うっせーよ何せびってんだよ、さりげなく」
「へへっ…バレました?」
「(はあ…)…ちょっと赤也、あんた少ししゃがんでみ」
「へ?」


なんで?と首を傾げる赤也に「いいからいいから」と黙らせ、しゃがんでもらった。…良かった。これでやっと目線が赤也より上になれた。赤也のやつより身長が低いからな、私


「先輩?何を…」
「赤也、」
「?はい」
「お疲れ様、」
「!っ…」


ちゅっ。赤也のうねうねした髪の毛をサッと手で上げ、おでこに唇をふにっと押し付ける。それにかあっと顔を赤らめる赤也が可愛い。ふふふと勝ち誇ったように微笑めば、赤也が少しつまらなそうに「……サプライズッスか?」とそっぽを向く


「赤也あんた、そんな英語知ってたんだね」
「…茶化さないで下さいよ。つーかサプライズならオレが何かしたかったッス!あーもう!先輩、あんたのツンデレは波が激し過ぎて分からねー!」
「だからデレてねーよ」


ー…あんたが人を傷付けるテニスをしても、私は絶対に責めたりしないから。私はあんたの味方だから、ずっとずっと。そんなことを考えながら、私は赤也の頭をくしゃりと撫で「また赤也の試合見に来るからね」と笑った。私はあんたの、黄色いボール追いかける姿見るのが好きだからさ


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テニプリじゃ一番赤也が好きだ好きだ好きだー(*´ワ`*)
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