◎一応連載設定のまま/以下、三人は宇宙科ロードワーク中です



「……はあ、宇宙科になんか入らなきゃ良かった…」
「ぬぬ…さっきから呪文みたいにそればっか言ってるな」
「宇宙科は入ることすら難しいっていうのに、随分と贅沢なこと言うよね」
「首席と次席が何を言うか。クラス1の馬鹿をなめるなよ…!」

むわー!宇宙科だからって色々規制されてることが多すぎてイラつく!まあ将来のために全て必要なことなんだろうけど?宇宙食食べろとか、毎日のロードワークを欠かすなとか…他の科よりハード過ぎなんじゃないか宇宙科は。私は真っ白なジャージの袖を少し捲り、走る速度を少し速めた。そんな私に合わせて、何食わぬ顔でペースを速めた梓はともかくとして……

「…翼、もう少し早く走ってよ。そんなに遅いと1限間に合わないよ」
「ぬわわ〜…無理なのだ、俺長距離走るの苦手〜」
「翼は昔から体力ないよね。まあ、普段から屋内に引きこもってたし仕方ないけど」
「うわ、男なのにだらしないぞー。…そんなんじゃ月子先輩に笑われちゃうかもよ?」
「確かに先輩は弓道部の部員のなかでも体力ある方だしね。翼よりは先輩のほうが…」
「うぬぬぬ…そんなのは嫌なのだ〜!!!」

急に私と梓を抜かし、ビュンとすごいスピードで走り去っていく翼。おおっ、すごい!まるで短距離走するぐらいの勢いじゃないか

「すごい!速いよ翼!」
「うぬぬ、書記よりも俺の方が体力あるんだぞ!」
「…翼、僕はあとで辛くなっても知らないからな」

はあ…とため息をついた梓はそのまま翼から私に視線を向け、「翼と違って、まだ大分余裕そうだね。すごいじゃない」と少し感心したように笑った。えっ、そうかな…すごい、かな…

「やる気がなくても、こういうのを難なくこなせるのはやっぱり才能あると思うよ」
「そ、そんなこと…」
「まあ勉強以外は、の話だけど」
「!……」

…一度褒めたと思えばすぐにそういうことを言う。まるで飴と鞭だ。本当に梓は意地の悪い人間だと思う。誉先輩と月子先輩にはめっちゃ良い子ぶってるくせに…!むっと頬を膨らませた私に、梓がフッと不敵な笑みを見せた気かした。あーもう!どうせブサイクだとか思ってるんでしょその顔は!

「…梓って性格悪いよね」
「何で?褒めてあげてるのに?」
「いつ、梓が私を褒めたって?」
「だからその男よりたくましい運動神経だけは評価してるって言ってるだろ」
「なっ、それは褒めたうちにはいらな…」
「ぬわ〜!もうギブアップなのだ!!」
「…!」

大きな叫び声が聞こえたかと思えば、私たちのいるところの10メートルほど先で地面に倒れ伏す人影が見えた。…翼ったら何やってるんだろ。私と梓は顔を見合せ、翼の元に駆け寄った。そして私は紫色のふさふさした頭をつんつんとつついてやる

「つ・ば・さ!どうしたの?」
「……もう走れないのだ」
「はあ…だからペース配分考えろって言ったのに」
「えーもうすぐ授業始まっちゃうし、あと少しくらい頑張りなよ」
「…今は動けないのだ。心臓がバクバクしてる…」

パタリと顔まで伏せてしまった翼は呻くように「二人とも先に行ってて…くれ…」と呟いた。……時刻は既に8時20分。ジャージから制服に着替える時間も考慮したら、もう校舎に戻らなきゃいけない。梓も腕時計を確かめて、眉をひそめていた

「…仕方ないな、僕達は先に…って!何してるの!?」
「ん?おんぶだけど?」

翼に「ほら、乗って。乗らないと翼のラボにある発明品を1つ壊しちゃうよ」と背を向ければ、翼は青ざめた顔をしてサッと飛び乗った。…うん、こうして校舎に戻れば早い早い。満足したように笑みを浮かべた私に対し、梓は至極微妙そうな表情をしていた

「?梓?」
「……本当、力だけはあるよね。怪力女とかあだ名で呼ばれたこととかないの?」
「ねーよ」
「ぬはは!俺おんぶされるの初めてだ!視点が高くて楽しいのだ〜」
「あ、そうなんだ?とりあえず校舎まで走るよー」
「うぬ、れっつらごーなのだ!」


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そんなこんなな宇宙科の日常。連載ヒロインは怪力なので
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