「〜♪〜♪」

一つ一つの音符を繋ぎあわせ、たった一つのメロディーを作り上げていく。…綺麗な声。私がこれを作曲した時にはこんな良いものに仕上がるとは思わなかった。良かったね、こんな素敵に歌えてもらえて。と思わず楽譜を撫でてあげたいぐらいだ。

「…どうだ?」
「うん!すっごく素敵だったよ!」

本当にありがとう、とお礼を言えば翔くんは「な、何だよありがとうって…」と不思議そうに首を傾げた。…こうやって誰かと感情や言葉を交わし何かを創作していくというのは非常に楽しいものだ。人見知りで内気な私が自分から何かを発信していく。それだけでも私には奇跡みたいなことだし、そんな私が表現した曲を受け入れてくれる人…翔くんという存在に出会えたことも、本当に本当に奇跡的なことで…

「翔くん、」
「ん?何だよ」
「私ね、翔くんと出会えて良かったよ」
「…へ?」

な、何だよ急に…とプイと顔を背けた翔くんに私は「今、言っておきたかったの」と言葉を紡いだ。ちらりと視線だけくれた翔くんに、私はにっこりと微笑みを返す

「…私の作った曲を翔くんが歌ってくれること、私にとっては誇りなの。翔くんが私の曲を何倍もすごいものにしてくれるから」

そういえば、彼が何故私なんかをパートナーに選んでくれたのか理由を聞いてなかったなあ…なんて。多分この課題が終わったら、翔くんは卒業オーディションにむけて別の人とパートナーになるのだろう。ならば翔くんが私を選んでくれた理由、それが分かれば次の課題にむけて私がパートナーを探すのに役立つ。…ただでさえ人見知りで周りと打ち解けられていない私だ。パートナー探しには苦労にするに決まってる。その旨を翔くんに伝えれば、翔くんは不機嫌そうに眉をひそめた

「…?翔くん?」
「お前……俺様の声に何か不満でもあったのかよ」
「え?」

そんなのないけど…。むしろ私は翔くんの元気で力強い声が大好きだ。歌詞のフレーズも、彼の声によってよりメッセージ性が増す。翔くんに不満なんかあるはずがないじゃないと伝えれば、彼は何故かひどく安堵したような表情を見せた。…?今日の翔くんはコロコロ表情が変わるなあ…。そんなことをぼんやりと考えていると、翔くんは私の書いた楽譜をバッと私の目の前に突き付けた

「お、俺はお前の作った曲が好きだ!何かすっげー共感出来て心が温かくなるような歌詞だし、曲調も妙に耳に残る感じでそれでいて単純なものじゃないからやりがいがあるし……」
「…翔、くん?」
「だ、だからその…これからもお前は俺様のパートナーでいろ!」

顔を真っ赤にしてそう一言言い放った翔くん。私はそんな彼にサッと自分の手を差し出した。…嬉しい。これからも、私は翔くんと一緒に音楽が出来るんだ。私の作った曲を、翔くんが歌ってくれるんだ…

「あ、ありがとう…!そう言ってくれて、私すごく嬉しい!これからも一緒に頑張ろうね」

翔くんと音楽を通して、同じものを感じて同じものを共有していく…それが私にとっては幸せで。違うものが互いの心にあったなら、言葉を交わしてそれを理解しようと互いが意識する。それもまた私には幸せ。だから翔くんと一緒にいるとき、私は自然と笑顔になれる。私、今が楽しい。そうありのまままに自分の気持ちを伝えれば、翔くんは「…お前って本当鈍感だよな。むしろ天然?」とため息をついた。?それ、どういう…。この疑問を翔くんにぶつけたところで、彼は答えてくれるのだろうか。私の手をきゅっと握った、翔くんの少し汗ばんだ手の温もりを感じながら私は首を傾げた。ー…私は"何か"を見落としてしまっているのかもしれない


−−−−−−
天然少女と翔くんの恋の始まり。翔ちゃんマジLOVE1000%!!
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -