「晋助、晋助」



ひょこりと船の甲板に現れた少女

俺はそいつをちらりと見やりつつ、素知らぬフリをして煙管をふかした

白い煙が風にゆれ、闇夜に溶ける



「晋助ー、もうお部屋の中入ろうよ。いい加減、体冷やしちゃうよ?」

「……」

「ね、晋助ってば聞いてるー?」

「……」

「(む、)」


…ドン!


「!」


そのままシカトを決め込めば、そいつはいきなり後ろから抱きついてきやがった(そりゃもうタックル並みの勢いで)

もたれかかるようにして、そいつはさらに俺の腰に回した手に力をこめる



「晋助、もしかして何かあった?」

「…どうしてそう思う」

「今の晋助の心(ここ)、いつもより何か歪んでるから。色も悪い」

「……ハ、おめーも厄介な能力持ってるよな。他人の心が、見えるなんてよ」



「そうだよー。だから晋助も私には隠し事なんか出来ないんだぞー」なんて威張るコイツは何のことはない、ただの人間だ

…ただし先に述べたように、コイツには人の心が見えるのだ

コイツが言うには人の心っつーのは所謂ハート形だけではなく、様々な色や形があるらしい

(まぁ実際見たことがない俺には、んなことも分からねーがな)



「でも晋助はこんな能力(ちから)がなきゃ、私のこと仲間に入れてくれなかったでしょ?」

「…ククッ、どうだろうなァ。少なくともお前みたいに、空気の読める女は嫌いじゃねーぜ?そばに置いておく価値もあるほどにな」



落ち込む、なんて可愛いもんじゃねーが

それでも気持ちが沈んだ時に、こうして俺なんぞを包んでくれる温もりがあるっていうのは

決して邪魔ではねーし、欲していないわけではねー気がするんだ


すきま風


(ほら、もう部屋に戻ろ?今夜は私が腕枕してあげるから)

(……そりゃ御免こうむる)


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特殊能力ヒロインさん×高杉さん。…シリーズ化してみたいなぁ.