死亡フラグ編捏造



カリカリ、
「……ん…?」
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
「え、夢さん…?」

ふとペンを走らせるような音に目を覚ませば、そこには机に向かう夢さんの姿が。…何をやっているんだろうか。むくりと体を起こせば、肩から厚手の毛布がパサリと落ちた。…あれ、俺何で毛布なんて…

「あーそれ、風邪引くと思って掛けといたの。後で女中さんに返しといてね」

右隣を見れば同じく毛布をすっぽりとかぶり寝息を立てる沖田隊長の姿が。……ああ、そうか。先日の創界党の件の報告書を処理しているうちに寝ちゃったのか…

「いやーそれにしても副長も鬼よね。こんな半端ない量の始末書書かせて」

そうペラリと一枚報告書を見せ、苦笑いする夢さん。その傍らには幾重にも積み上げられた報告書の山があり、俺はいくらか目を丸くした

「え…夢さんがそれ1人で全部やったんスか!?」
「?うん。でもやっぱり全部は無理だったみたい、少し残っちゃった。ごめんね」

いや、俺達が寝る前はこれの三倍の量はあったはずなのに…。あれだけあった報告書を俺達が寝ていたであろう2、3時間で仕上げただなんて。…流石は夢さん。副隊長の座は伊達じゃない。尊敬と感謝の念をこめて夢さんを見上げれば、彼女はスッと立ち上がり部屋の襖に手をかけた

「じゃ、私もう行くわ。沖田隊長には神山くんがやったってことにしておいて」
「ちょ、ちょっと待って下さい!一体何でっスか?」
「だっーて、余計なことすんなって沖田隊長様に怒られちゃうでしょ?」

そう口を突き出しいじけたように言う彼女。だがその口調は随分と軽いもので。俺としてはある疑念が湧いてきた

「…夢さんは今回のことに関して何も言わないッスよね。どうしてッスか?」
「へ?」
「心配だったりしないんでスか?」

だってそうでしょう?沖田隊長は今回、恋人であり一番隊である夢さんに何も言わずに、単独で創界党に踏み込んで、しかもこんな怪我して帰ってきたんだから。それに彼女は悲しんだり怒ったりしたっていいはずだ。…だが、彼女は違った。沖田隊長が創界党に拉致されていた時も、屯所で治療を受けていた時も、彼女は今まで一度たりとも顔を見せなかったのだ。それには俺も、お節介にも薄情なんじゃないかと思ったわけで

「…別にこの人が単独で行動したがるのはいつものことじゃない。そんなのいちいち気にしてられないわよ」
「どうしてそこまで割り切れるんスか」
「…そうねェ。本当に辛い時は頼ってくれるって信じてるから、かな」
「!」
「まあプライドの高いこの人がなかなか弱音なんか吐かないでしょうけど?」

驚く俺を尻目に彼女はくすりと微笑を浮かべ、そのままひらひらと手を振りながら立ち去っていった

「神山くんも今回はお疲れ様。それ終わったらゆっくり休んでね」
「…お疲れ様でした」

―…夢さん、俺本当は知ってるんスよ。夢さんが万事屋の連中に独断で沖田隊長の捜索を依頼をしたり、今回のことを局長達に露見したり。そうやって裏であなたが沖田隊長のために色々働いていたことを。…実は貴女が一番、沖田隊長のことを心配していたんだってことを…

「…素直じゃない人達ッス」

それでいて、今だにお互いに顔を合わせようとしないんだから



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