恋人は〜



12月24日

今日はクリスマスイブだからか、江戸の街はどこもかしこもイルミネーションでキラキラと飾り付けられていた

辺りからはジングルベルジングルベルと無駄に陽気な音楽が聞こえてくる



「うわぁ綺麗〜!」

「いいよな、お前はそんな能天気で。…ったく何でこんなにクソ寒い中、見回りなんかしなくちゃならないんでィ」

「クリスマスみたいな行事は、浮かれて犯罪に手を染める輩がいるかもーって近藤さんが言ってたじゃん。仕方ないよ」



そりゃそうだけどよ…正直俺の知ったこっちゃねーや

しかも何だってこんなに街がカップルで溢れてんでィ。邪魔で邪魔で仕方がねェ

どーせコイツら、クリスマスにあやかって在りもしない奇跡信じてる口なんだろ?



「…サンタさん、今日来てくれるかなァー」



この馬鹿みたいに



「あ。今日の夜寝る前に、枕元に靴下置いとかなきゃー」

「…本当幸せなやつだなテメェは。お前見てると何か色々馬鹿馬鹿しくならァ」

「うん?それ、誉めてる?」



今どきサンタ信じてるとか…本当ガキか、コイツ

いや、最近のガキでも正体は身内にあることぐらい分かってんだろィ

正体が休日家でごろごろしてる、あの見慣れたオッサンだってことくらい分かってんだろィ?



「つーかお前、いやに浮かれてんな」

「え?」

「もしかして何か欲しいもんでもあんのかィ?」



サンタをそんなに楽しみに待つなんてのは、勿論ブツが目当てなんだろうけど

コイツは普段から他人にねだることなんか滅多にしねェ奴だから

何を欲しがってるかなんて、皆目見当がつかねェ話で



「ん―…とね、内緒!」

「は?」

「だって総悟、すぐに誰かに言いそうだもん。そしたら恥ずかしいから絶対言わない!」



恥ずかしい?

一体コイツ、何をあの赤いオッサンにお願いする気なんでさァ

軽く首を傾げる俺に、夢は気まずそうに苦笑いを返すだけ

…どうやら答える気はさらさらないらしい



「そ、そろそろ屯所に帰ろっか」

「…おう」



若干気まずい雰囲気を感じつつ、俺達はそのまま真選組屯所へと戻った









ー…そしてクリスマス会という名の宴会をすませた後、俺は1人屯所の縁側を歩いていた

夜もどっぷりふけ、時刻は既に9時過ぎごろになるだろう

「あーぁ、とりあえず風呂でも入ってくるか」なんて考えていたその時、こそこそと動き回る怪しい人影が目についた

あれはー…



「…一体何してんでさァ、近藤さん」

「!シーッ!総悟、声大きい!」

「いや、近藤さんの声の方が大きいですぜ」



そこで俺が目にしたのは、夢の部屋の襖にちょうど手をかけようとしている近藤さんの姿で

しかも…その姿はいつもの隊服でも着流しでもない

真っ赤な服に真っ赤な帽子。そして担ぐのは真っ白く大きな袋

これはいわゆる…



「サンタクロース、ですかィ?」

「あぁ。可愛い可愛い夢の為にな、こうしてお父さんがプレゼントを持ってきたわけさ!」



お父さんって…相変わらず夢には甘えなァ、近藤さんは

あり?でもプレゼントって…



「よーし、そろそろ夢も寝たかな…って総悟!何やってるのォォォ!?」

「シーッ、あのガキ起きちゃいますぜ」

「あ、ゴメンゴメン…ってあれ?なんか俺が悪い感じになってる?」



ごちゃごちゃ言う近藤さんを無視して、ゴソゴソと袋の中を勝手に探ってやった

するとそこにあったのは…



「着物……?」



出てきたのは、花柄をあしらった薄い桃色の着物で

…服のことなんざよく分からねェが、

派手過ぎず地味過ぎず…これはこれでとても“アイツ“に似合うと、その時何故か思った

まじまじとそれを凝視していた俺を見てか、近藤さんが嬉しそうに笑う



「…お妙さんが着ているみたいなのを、自分も一度でいいから着てみたいって。アイツそう言っててな」

「!…夢が、そんなことを?」

「あぁ」

「……」



『恥ずかしいから絶対言わない!』



…アイツがそう言っていたのはきっと、普段から俺らに“女らしいところ”なんか見せてなかったからなんだろう

(まぁこんな職場にいることを考えれば、それも当然なんだけど)



「…馬鹿なやつ、」



女物の着物を着てみたいだなんて…そんなの、別に恥ずかしいことじゃねーのに

むしろ年頃の娘がそういうことを考えない方がおかしいってもんだろィ?

…もっと、素直に自分の気持ちを出したって誰も気にしねーってのに

無駄なことばっか考えてるからなコイツは



「ん?総悟どうした?」

「…近藤さん。俺、ちょっくら出かけてきまさァ」

「へ?」









「そ、総悟!見て見て!」

「何でィ朝っぱらから」

「サンタさん、今年は大盤振る舞いだよ!着物の他に…ほら!こんな可愛いネックレスまで!」

「……へぇ随分と気前のいいサンタもいたもんだねィ。精々感謝しなせェ」

「?う、うん」


恋人はサンタクロース


(ー…明日の朝までにこのネックレス、屯所に届けにきなせェ)

(いや、でも当宝石店の運営時間は既に…)

(いいから明日の朝までに、でさァ。出来なかったらテメェの店潰すからな)

(ええええ!!)


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素敵企画楔様に全力で捧げます!うああ松/任/谷/由/実さんの歌に沿えましたか…ね?^^;
そして長くなってごめんなさい


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