男だもん



「…ん?」

地面にぽたぽたと丸い染みが広がる。雨だ、そう思った時には既に私の鼻の頭にぽつりと雫が当たった。ふと見上げればそこにはゴロゴロと騒めく真っ黒な空があって。だんだん雨音が激しくなるにつれ、私はその場から動くのが億劫になってしまった。…どうせ濡れるならこのまま屯所まで歩いて帰っちゃおう。ついでに道端に咲く紫陽花なんか見ながら

「…あれ、夢さん?」

そんな時、折よく一人のよく見慣れた少年に声を掛けられた




**



「おう、新八おかえり…ってあれ?何で夢がここにいるアルか」
「えへへ。途中で会ったから傘に入れてもらってさ、ついでに新八くんの荷物持ちしたの」
「あ?外、雨降ってんのか?」
「降ってるも何も大雨ですよ。っていうか銀さんアンタまだ寝てたんですか?」
「別にいいだろ。今日は依頼がないんだから」
「じゃあ別に僕に買い出し押しつける必要なかったじゃないですか!」
「新八ィ、お前は何のために存在してるアルか?雑用をするためだろ?」
「何だとォォォォ!!」

ギャーギャー騒ぎだした万事屋さん達をボケッと眺めながら、私は自前のハンカチで濡れた髪の毛を軽く拭いた。…相変わらず仲が良いなあ万事屋の皆さんは

「…は、くしゅっん!」
「「「!」」」

突然感じた寒気にブルルッと身を縮こませれば、三人がカッと目を開きこちらを振り返った。え、なに?

「…あ〜確かにそんな濡れた格好のままじゃ流石に風邪引いちまうよなァ」
「そうですよね。とりあえず夢さん、万事屋(ウチ)で着替えていった方がいいんじゃないですか?」
「え…いいの?」
「俺達もこの寒空のなか、んな格好した女ほっぽり出すほど非道じゃねーよ。神楽、お前一着何か貸してやれ」
「おうヨ。夢、こっち来るヨロシ」
「う、うん」

そのまま神楽に手を引かれ私は風呂場の方へと向かった







「…アイツらちょっと遅くねーか?」
「そうですね。もうかれこれ30分経ちますかね」

ただ着替えてるだけだろ?30分もかかるか普通。そんな会話をしていたところにちょうど、奥からガラガラと扉の開く音がした。何だやっとかよ

「オイ、随分遅かったじゃ…」

居間に現れたその人物を見るなり、俺は思わず口を閉ざしピタリと身動きを止めた。隣では新八が顔を真っ赤に染め、同じように無言で立ち尽くしている。いや、つーかその格好…

「神楽、お前それ…」
「ちょっと夢にはサイズが小さかったみたいアルな」
「何かギリギリ着れるのがこれしかなかったんですよー」

そう言う神楽の後ろには赤いスリットのチャイナドレスを着た夢ちゃんの姿。身に纏ったそれはピッタリと少女の身体のラインを映し出していて。かなりすれすれまで露になった、色白い太ももがこれまた目をひく。…つーかコイツ結構良いスタイルしてんのな。いつもあの色気のねー隊服着てるから、全然分かんなかったわ。…いや別にエロい目線で言ってるんじゃないし、ロリコンでもないけどね?ただガキだガキだと思ってた夢ちゃんに対する見方が、今までとガラリと変わったというかね?驚いただけっていうかね?

「?銀さん新八くん、鼻血出てるよ。ティッシュ要る?」
「夢にエロい目使ってんじゃねーぞウジ虫共」
「「……」」



**



「…ただいまー!」
「ああ、おかえ…」
「?総悟?」
「…お前それ、どうしたんでさァ」
「んー、これ?神楽に借りたの。隊服は雨でずぶ濡れになっちゃったから」
「…へェ」
「うん。あれっ、総悟どこ行くの?」
「ちょっと頭冷やしてきまさァ」
「へ?」


−−−−−−
意地でもチャイナドレスのヒロインさんを可愛いとか思いたくない沖田くんとか。


.
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -