おかえり



「ねえ、仙台土産はないの?」
「…そんなのあるわけないじゃん」

遠征から東京の自宅に漸く戻ってきた俺達を出迎えたのは、少し久しぶりに会う口うるさい幼なじみだった。ただでさえ疲れてるっていうのに…。だいたい、何で俺の家に当然のようにいるの。何で我が物顔で俺を玄関先で出迎えるの。もう色々言いたいことがあり過ぎて。テンションの無駄に高い幼なじみを無言で睨み付ける俺の後ろから、クロが「うわ、研磨の家がアホに乗っ取られてる」と少し大袈裟に驚いたようなリアクションをした

「アホとかひどい!仙台から遥々帰ってきた二人を一番迎えるためにわざわざ研磨宅でスタンバイしてたのに」
「一番に出迎えてくれるのはベッドが良かった…」
「言えてる」
「二人とも何故そんなに私を虐めるの」

「お土産も心待ちにしてたのに…私頼んでたじゃんかあ…」とか大袈裟な嘘泣きをかまし玄関に突っ伏す夢を、クロが「バカ、遊びに行ったわけじゃねーんだぞ。つーか誰も買うなんて言ってねえ」と一蹴する。…俺の家の玄関先で落ち込まれても困るんだけどな

「うう…こっちはしばらく研磨もクロもいなくて本当に辛かったというのに…」
「?何で?」
「何でって研磨!こちとら休み時間は話す子いないし、お昼もぼっち飯だったし、放課後バレー部の部室にも入れないし、休み中も遊ぶ相手いないし!」
「あー…お前友達いないもんな。悲しいやつめ」

染々と呟き、クロはうんうんと納得したように頷く。…俺もまあ、クロや夢やバレー部の人達しか話さないけれど…。夢はまた、ただ黙ってるのが出来ない性格だからなあ。話し相手が誰もいないのは辛いんだろう

「…でもさ、夢は無駄にお喋りなんだから他の子ともどんどん話してみれば…?」
「研磨、無駄にとか酷くないですか!」
「的確な表現だろうが」
「人と話すの好きなら、友達…作ればいいじゃん」
「えっ、や、やや無理だよ。私見事に内弁慶だもん。てか、そんなん幼なじみの二人なら分かってるでしょ?」
「あーあー分かってる分かってる。他の奴らには無駄によそよそしく猫かぶるくせに、俺らには横柄な態度で馴れ馴れしいもんなお前」
「クロ酷い!さっきの研磨より酷い!」

…あーもう、いつまで夢とこんなコントじみたことやらなきゃならないの。俺はもう疲れてるんだ。俺は靴を脱ぎ、ひたひたと廊下を進んでいく。不思議そうな顔をする夢に「もう疲れてるからお風呂入って寝る」と伝えれば、「あっお風呂ならさっき私が入っちゃったから温いかも!お湯で埋めておいて」と返された。いや…何で夢がうちのお風呂に入っちゃってるの?何なの?本当

「…研磨の家が本格的にアホに占領されたな」
「……幼なじみって選べないね。不幸だ」
「二人ともおかえりなさい!あー嬉しい!」



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面倒くさい幼なじみがいたりな話




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