非行



シャッ。部屋のカーテンを開ければ、眩しい光。…もうこんな時間かあ。あと数十分で授業が始まる。けど、それでも私は今だパジャマのまま。制服に着替えることさえせずに、ベッドの上に寝転がる


「………」


最近は毎日こんな感じ。朝が来て日が昇っても、寮の部屋に籠りきり。お昼か夕方になって自然の摂理でお腹がすけば、こっそり食堂に行って食事を食べて寮の部屋に戻る。その繰り返し。…この星月学園みたいに全寮制度の学校で不登校とか、私どうなるんだろ。欠席数足りなくて強制退学とか?…でもそしたら地元に帰れるよね。そんなことを考えて、布団にもぞもぞと潜る


「ふう…」


この星月学園に入学して1ヶ月半、出来た知り合いはたった二人。星月学園二人めの女子生徒を珍しがって私を取材に訪ねて来た、白銀先輩と。あとは入学式のとき手続き上お世話になった不知火会長。ちなみにまだもう1人の女子生徒、夜久先輩には挨拶も出来ていない。…もちろん、天文科のクラスメイトなんかとは一言も話せてない状況。まあ、男子校同然の学校だし。やっぱ中学の時とはノリが違う。男子だって男子同士で絡んでばっかで、私に誰一人声をかけてくれる善良人はいない


「…ああ、つまらない高校生活だなあ」




**



後日、私は職員室に呼び出しをくらった。やはりこのニ週間、学校に顔を出さず寮にいたのが悪かったらしい。私を呼び出した陽日直獅先生。彼は優しく明るいと評判なのに、今私の前では何だか厳しい顔つきになっていた。幼い顔立ちながら、やはり教師。私が萎縮してしまうような、ピリピリとした雰囲気がその場にあった


「眠井、お前何で呼び出されたか分かるよな?」
「はい、分かりますよ」
「…眠井、お前何で授業に出ないんだ?このままじゃ卒業も進級すら出来ないぞ?いくら何でも休み過ぎだ」
「ー…それでいいです」
「え?」
「もう嫌なんです、こんな学校」


父親と母親が天文学者をやっているから、娘の私にも天文学関係の仕事をと。親の都合で勝手に入れられただけ。私はこんな学校に来たくなかった。星月学園みたいな田舎の、男子校なんかに。星に関する専門知識なんてどうでもいい。そう忌々しげに呟けば、陽日先生は少し呆れたようにため息をついた


「あのなあ…今さらそんなこと言ってても仕方ないだろ?お前は現にここに入学して来たんだから。もう入学して1ヶ月半も経つ。卒業まであと三年あるんだ」
「先生に私の何が分かるんですか?とにかく私はもう辞めたいんです。勉強もついていけないし、友達だって出来ない…こんな思いするなら地元の普通の学校に今からだって行きます」


退学になれば、親も流石に気付いてくれるだろう。娘は天文学者に向いていないと。…もうそれでいい。早く私はこの学校から出ていきたいんだから。さっさとおさらばしたい。が、陽日先生に「
そんなの、ただの甘えだろ?」と低い声で一喝され、そんな思考も止まってしまった


「…自分から行動すれば、自分の世界は変わっていくんだぞ?逆に行動しなきゃ変わっていかない。周りを見てみろ。皆そうして学校生活を送ってるだろ?」
「……」
「勉強以外にも部活や委員会、選択肢はたくさんある。どれにどう打ち込んでいくかはお前の自由なんだ。だから…諦める前にもう少し自分から積極的になってみろって。な?」


「例えばお前と同じクラスの昆野、アイツに話しかけてみてもいいんじゃないか?昆野は優しいやつだし、きっとお前の力になってくれる」と今度は笑顔でそう言ってくる陽日先生。…何でそんなに他人に親身になれるのか分からない。今までの私のなかの先生の認識と食い違ってる。…こんな教師、見たことない。もちろん良い意味でも悪い意味でも。私は何だかよく分からない気持ちのまま、職員室から出ようと席を立った


「…私、先生みたいな熱い説教ばっかの大人嫌いです」
「…あははっ、そのわりにはさっきよりすごく良い顔つきだけどな?お前。何か考えがふっ切れたような顔してるぞ?」
「……そんなの気のせいです」


苦手だ、この先生は。むやみに私の心に踏みいってくるから。教師なんて生徒に表面上優しく接してくるだけの存在のはずなのに。何故彼は自らリスクを背負うようなことをするんだろう。教師なんて、実際は生徒1人1人と向き合う必要ないのに。…馬鹿な大人。そう心のなかで毒づき、私は職員室を後にした。「明日はちゃんと遅れずに学校に来いよ〜」と後ろから投げ掛けられた言葉にさらにイラつく。ー…何故彼は私みたいな生徒にも、そんなにまっさらな笑顔を私にくれるのだろう


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ひねくれ夢主連載もありだなあ…(´ω`)


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