繋がる
「ううっ…気持ち悪い…」
私はズキンズキンと痛む頭を押さえ、ふらふらと壁に寄りかかった。頭も痛いし、吐き気もするし、うわもう最悪
「(……原因は分かってるんだけど、ね)」
私はさっきから私の周りをふわふわと浮いているそいつらを、じろりと睨み付けた。もう…本当に嫌だ。どんどん増殖してくし。すごい気持ち悪い
「(コールタールごとき、いつもならパパッと追い払えるのに…)」
祓魔師になるため日々修行を重ねている私としては、今のこの状況は屈辱でしかない。…だが、先日ある事情があってシュラ先生に自分の武器を預けてしまった今、私が何も出来ないのも事実
「(…っ、そろそろ限界、かも…)
元々体調が良くなかったのもあるけど、コールタールにこうもずっと群がられれば私の体力も限界だ。ぐらりと身体のバランスを崩し倒れかけたその時、何かが私の身体を支えてくれた
「っ、…」
「オイ!大丈夫か?」
「!り、燐どうして…」
ぐったりと身体を委ねたままそう尋ねてみたが、「あーうざったいな、こいつら!」と燐はさっそくコールタールに向かって怒声をあげていた。いや、私の質問無視しないでよ…!「燐…」と再度声を掛けようとした瞬間、私たちの頭の上に突然バシャッと水が掛かってきた
「ひゃっ…!?」
「つ、冷てェェェ!!?て…てめえ雪男何すんだよいきなり!?」
「何って…そいつらを追い払うために聖水を二人にかけたんだよ」
「いやそれならそうともっと方法があっただろうが…は、はくしっ!」
「あはは、ごめんね兄さん」
にっこりとまっさらな笑顔を見せ、雪男は私に「大丈夫だった?」と手を差しのべてくれた。あ、そっか…このまま燐に支えてもらっててもダメだよね。私は足先にグッと力を込め立ち上がり、雪男の手を取った
「ごめん、燐ありがとう。もう大丈夫だよ」
「ん?おう!そりゃ良かった」
「全く…夢はどうしていつも勝手な行動を取るの。夢は人より憑かれやすい体質なんだから、ちゃんと僕か兄さんと一緒にいなきゃダメでしょ」
「…わ、私だって祓魔師見習いだもん。二人に頼らなくても自分で対処出来るよ!」
「あ?でも今は武器をシュラに預けてて丸腰なんだろ?お前」
「!そ、それは…」
燐の言葉にうっと言葉を詰まらせると、「…どうせ僕と兄さんに迷惑かけたくないとか、そんな無駄な気を遣ってるんでしょ」と雪男にフンと鼻で笑われた。くっ…何で雪男はいつも易々と私の気持ちを読んじゃうんだ…!
「は?お前そんなこと考えたのかよ。あははバカだな〜」
「そ、そんなに笑わないでよっ…!」
私の頭をぐしゃぐしゃと撫で、けたけたと笑う燐にそう抗議するも、彼は私の頭を撫でるのをやめ、何故かそのまま私の右手をギュッと掴んできた。!え…何この状況。左手は雪男に握られて、右手は燐に握られて…。これじゃチビな私はまるで、捕獲された宇宙人みたいだ
「え?あ、あの…」
「こうしときゃお前ももう逃げられないだろ!」
「…あはは、確かに。これなら僕と兄さんも一安心だね」
ほら、君と僕らはこんなにも簡単に繋がれる
「…二人とも過保護過ぎ…」
「ハ、何とでも言えよ」
「夢はまだ子どもなんだから、保護者が要るでしょ?」
「…私二人と同い年なんだけど」
「精神的な意味でだよ」
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