斎藤一×天然彼女



「ん…?」

何かを引き摺るような音に目を覚ませば、小さな人影が襖にぼんやりと映っていた。欠伸をしながら戸をスッと開けてやれば、予想通りの人物がそこにいて

「……また来たのか夢」
「…何その顔、すごく嫌そう」
「べ、別に嫌ではないが…
「が、って何よ。…もういい。やっぱり私、左之のところ行ってくる」
「!いやダメだ!夢、早く俺の部屋に入れ!」

そう咄嗟に叫び、俺は夢の腕をグイツと引っ張った。そして元々寝ていた場所から体をずらし、寝床に一人分の隙間をつくってやると、夢は嬉しそうにそのスペースに潜り込んできた

「……ごめんね、一。何度もこんなことしてもらっちゃって」
「…気にするな。お前の気持ちは俺にも分かる」

こうして夢が夜中に俺の部屋を尋ねてくるのは必ず"人を斬った日の夜"だ。…そう、夢は今だに人を斬ることに慣れてないのだ。いくら新撰組隊士と言っても、この顔にあどけなさが残る少女に、人の血を浴びる修羅の道を歩むのはまだ早過ぎる。
だから彼女は1人で寝ることが出来ず、こうして俺のところに来る。…それ自体は別にいいのだ。俺も彼女の力になれることは嬉しいから。だが、問題は―…

「はじめ…?」
「な、何だ?」
「や、ぼーっとしてるからどうしたのかなぁって思って」
「…別に問題はない。ほら、さっさと寝ろ」

ゴロンと寝返りを打っても、どうしても背中にある温かみを気にしてしまう。思わずドクドクと音を立ててしまう胸の鼓動を彼女に悟らないように、俺はそっと胸を抑えた。ー……そう、問題は俺なのだ。こうして夢と…自分が慕う相手と一緒の布団で寝ていると思うと、今にも胸が張り裂けそうで。もっと彼女に触れたいという欲求が抑えられなくなる…

「(って…俺は何を考えてるんだ」

夢は悩み苦しみ、俺を頼ってきてくれたんだから。余計なことを考える必要はない。もっと自覚しなければ…。そんなことを考え込んでいると不意に小さな手が俺の腰に回り、きゅっと抱き締めてきた。今度こそ胸がドクリ、と音をたてるのが自分でも大きく聞こえた

「!?なっ…夢!?」
「…一は温かいね」
「え?」
「私、一の温もりが大好き。一緒にいて安心するから。…ね、もう少しこうしてていい?」
「!…」


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斎藤一×天然ヒロインネタでした
天然…ってほどではないけど、あわあわしちゃう一くんが書きたかったので。こんな感じに


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