力をもらって



「ねえ平助、もしかして何かあった?」
「……何でそんなこと聞くんだ?」

だって巡察から帰ってくるなり、こんなふうに甘えてくるなんてさ…おかしいじゃん。私の膝上に頭を乗せ寝転がる平助にそう言えば、「ん…何かあったと言えば、あったけど…」なんて鈍い反応が返ってきた。「誰かに話せば楽になるかもよ?」とあくまで控えめに促し、私は平助の頭を撫でる。くすぐったそうにする平助の長い髪をさらりと指で梳けば、金木犀の匂いがふわりと鼻をかすめた気がした

「…ハァ、夢にはかなわねーな。実はさっき巡察中に物盗りを1人逃がしちゃってさ」
「うんうん」
「で、そん時にちょうど一くんと出くわしてさ。一くんがその物盗りを取り押さえてくれて…」
「…なるほど。それで平助、ちょっと拗ねてるんだ?」
「!ち、違ェよ!んだよ笑うなっての!」

くすくすと笑みを溢す私に、少し焦ったふうに取り乱し口調を荒げる平助。その反応からして、図星だったんだろう。斎藤さんに助けられたのが悔しいんだ、きっと

「(別に気にすることないのになあ…)」

表向き気丈に振る舞ってる分、平助は意気地になってどこかいつも背伸びばかりしようとして…私から見たら少しだけ、危なっかしい

「…平助は意地っ張りだね。いいじゃない、仲間なんだから弱いところは支え合えば」
「う…そ、そりゃあ分かるよ。でもさ…」
「不安になる必要なんかないよ。だって実際、平助の強さに仲間(わたし)はいつも救われてるんだよ?」
「!……本当にそう、思ってるか?」
「ふふっ、もちろん」

どんなに辛くて苦しい時も、何かを投げ出したくなった時も。隣に平助の笑顔があったから…だから私は頑張ってこれたんだよ。そうありのままを伝えると、膝の上で平助は少し顔を赤らめ私からプイッと視線を反らした

「…夢ってなんかズルイよな」
「だって本当のことだもん。平助はもっと自分に自信を持った方がいいよ」
「…まあ俺も惚れた女の力になれてんなら、それが一番だけどさ」


(重ねた唇にまた、強さをもらって)



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