手を繋ぐ



「ハァ…」

スーパーの自動ドアを出た俺が手にしているビニール袋。中には煙草とマヨネーズとアイスが数点ずつ入っている。…まあ、つまりは上司に所謂パシリを仰せつかったわけなんだけど。(誰が何を頼んだかはご想像にお任せするとしよう)

「副長達も人使いが荒いんだからなあ…」
「あれ、山崎さん?」
「!夢ちゃん」

軽やかな声色に振り返れば、そこには俺と同じようにビニール袋を提げる夢ちゃんの姿があった。どうやら今日の夕飯の買い出しは夢ちゃんらしい。…女中さんも毎日毎日大変だよなあ

「…あの山崎さん、」
「はい?」
「もしよろしければ、屯所まで一緒に帰りませんか?」
「!」

そう提案する夢ちゃんに、俺は首が取れるかと思うくらい上下にガクガクと頷いた。…いや、っていうか断る理由なんてないからね!むしろこちらこそ一緒に帰って下さいって、土下座して頼みたいくらいだからね!俺…パシられ役であることに感謝したの、人生初めてかもしれない。ありがとう神様!

「?山崎さん…?」
「あ…夢ちゃん、良かったら俺が持つよそれ」
「えっ」

歩きだした折、俺は夢ちゃんが持つ重そうなビニール袋をさりげなく奪い取った。そう、いわゆるレディーファーストってやつだったんだ、けど…

「…大丈夫ですか?山崎さん」
「う、うん!全然大丈夫バッチリ!」

思ったよりも…っていうかコレ、本当かなり重いんだけどォォ!こんなに重量感のあるものを夢ちゃんは平然と持ってたわけ!?じょ、女中さんってのは偉大だな…

「…山崎さんはお優しいですね、」
「へ?」
「…女中のみんなから結構人気あるんですよ。山崎さんは気さくで親切な方だって」
「……」

…評判が高いっていうなら副長や沖田さんの方がそうだと思うけどなあ。あの甘いマスクに惹かれない女性はいないはずだし。(中身や嗜好は無視したとしてだけど)

「そんなことないですよ。俺は普通です、普通」
「…ほら、そうやって謙遜されるとことかモテるんですよ。山崎さんが気付かないだけで」

こちらをじろりと睨んで皮肉じみた言い方をする夢ちゃんに、何となく姉御の影がちらついく。何だこの負のオーラ…!俺、何かやらかしたっけ!?

「…山崎さんは優しすぎるから、私嫌なんです」
「え゛」

その言葉に俺は頭が真っ白になった。…想いを寄せる相手に嫌だと言われた俺の気持ちが、果たして分かる人がいるだろうか。まるで、す巻きにされたまま崖から突き落されたような感覚だ

「っ…」

…でも、ここでへこたれてちゃ俺はきっと前に進めない。地から這い上がれない。意を決して聞かなければ…!

「…それは、俺のことが嫌いだってことですか?」
「!ち、違います、そうじゃなくて…」
「そうじゃなくて?」
「…そう、じゃなくて。誰にでも優しい山崎さんを見てるとこう…胸が痛くてキリキリするんです」
「!……」

顔を真っ赤にさせながら夢ちゃんはたどたどしく呟く。そ、そんなに可愛い仕草されたら、こっちまで緊張するだろうに…!赤く染まっただろう頬をポリポリと掻きながら、俺は照れ笑いを浮かべた

「…俺もさ、夢ちゃんが副長や沖田隊長とかと話してるのを見ると胸がキリキリするよ?」
「!えっ…」

そっと自分の手を塞いでいたスーパーの袋を地面に置き、一応行動を取る前に俺は彼女に了承を得てみた

「夢ちゃん、君を抱きしめてもいいですか?」
「!」


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手を伸ばせば、


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