カチャッ、カチャッ、

「…ぬぬ、雛って本当不思議なのだ〜」
「私が?何で?」
「だって雛、さっきからずーっと俺が発明する姿見てるだけで…つまらなくないか?」
「…?」

女の子ってこういうのに普通興味ないだろ?と言われれば、あぁ納得。そうだよね…普通の女の子は私みたいに放課後になる度、翼のラボに入り浸るような真似しないよね

「……」

だけど、今だに戦隊ヒーローや仮面ラ●ダーのようなものを見まくっている私にとっては違う。私は翼が発明するマシンやらロボットやら謎の薬品やらにはとても興味をくすぐられるのだから仕方ない。…気分はまるで、玩具屋に連れて行ってもらった子どもと一緒だ

「うぬぬ…でも俺発明にすぐ夢中になるから、雛は暇になっちゃうのだ」
「…私は翼が発明してるとこ、隣で見られればそれで良いんだけど。邪魔なら出ていこうか…?」

私がいると気が散るから、翼は遠回しにそう言ってるのかなと思って立ち上がったが。すぐに「それは違うのだ!雛が邪魔なんて思ったこと、俺は一度もないぞ!」と叫ばれたあたり、どうもそれも違うと見える。もしかして…

「…もしかして翼、私に気をつかってるの?」
「ぬ…だってせっかく雛が俺のそばにいるんだから、俺は楽しませてあげたいのだ」
「それなら私は大丈夫だよ。私、発明をしてる翼が大好きなんだ。だから見てて楽しいし、嬉しい」
「?嬉しい…?」
「うん。翼のこういう自己表現の一つ一つを見られるのは…翼に近づけるようで嬉しい」
「…!」

自分の思い描いたものを発明品(かたち)にすること…それは間違いなく翼の自己表現だから。素直で明るい性格だけど、実際あまり自分のことを話してはくれない翼の…唯一の自己表現だから。ただ見てること自体に飽きるわけがない。そこには色々な発見があるから

「……雛は、本当に不思議なのだ」
「え?」

それ、さっきも言われたけど…。そう思った瞬間私はグイッと腕を引き寄せられ、翼の大きな身体にぎゅうっと強く抱きしめられた。…最初にこれをやられた時はマジでビックリしたが、今はこれが翼の感情表現の一つだと知っている。私を抱きしめる長い腕が小刻みに震えているのを見て、私は思わず眉をひそめた

「…翼、ごめん。なんか私、余計なこと言っちゃった…?」
「…ううん、逆だよ。すごく嬉しい言葉を雛がくれたから。急に雛をぎゅってしたくなって…でも頭の中は何故かごちゃごちゃで…」
「…そっか。分かった、いいよ。翼が落ち着くまでこのままで」

翼がこうやって"パンク"しちゃうのには見慣れてるから。ただ…いい加減自分が大切にされてるっていう感情や、それを意味する言葉を与えられることにもっと慣れてほしいんだけど…

「…雛、」
「なに?」
「雛は…明日もラボに来てくれるか?」

…私は翼の過去も、そこにあった苦しみも辛さも何も知らない。翼が時々見せる寂しそうな瞳の意味を…私は知らない。翼が毎日決まって紡ぐこの言葉の意味を私は正確には知らない。…だから私は翼が安心するように決まっていつも、笑顔を見せるのだ

「…当たり前でしょ。明日も明後日も…翼が望むなら、いつでも来るよ」
「…本当?」
「本当だよ。私が今までウソ言ったことある?」
「ぬ…ない、かな?」
「いや何でそこ疑問形なのさ。失礼な」

むっと頬を膨らませた私に翼がぬは!冗談なのだ冗談〜と明るく笑う。…翼にはやっぱりその天真爛漫な笑顔が似合う。これからも、私はこの笑顔を護ることが出来るだろうか。友達として…翼には決して今持っている幸せを失わせたくない。過去に囚われて今の幸せを捨てることだってしてほしくない。それが例え私のワガママだったとしても










空想レッテル


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