「やっほ〜マドンナちゃん、久しぶりだねぇ。元気してた?」
「…桜士郎先輩、眩しいんですけどそれ」

パシャリパシャリとシャッター音をたて、いきなり写真を撮りまくってきたのは…皆さんご存知の変態紳士、白銀桜士郎先輩なわけで。う、出会い頭に人の了承もなしに写真撮るとか…マジでやめてほしいんだが。この人は遠慮するという言葉を果たして知っているのかー…あ、やっぱ知らないなきっと。桜士郎先輩って一樹会長と同類の人種だもんな

「ほらほら、そんな怖い顔しないでよ。マドンナちゃんはこれから生徒会室に行くとこ?」
「…はい、一樹会長に来いって言われてるので。っていうか桜士郎先輩、それやめて下さい」
「それって…カメラのこと?くひひ、もうしまったよ」
「カメラのことじゃありません。その…"マドンナちゃん"って呼び方です」

入学式で目をつけられた時に"俺は一樹の親友の白銀桜士郎だよ。よろしくねん♪"と自己紹介を受けてからずっと…本当にず〜っと気になってた。だって月子先輩をマドンナちゃんって呼ぶならまだしも…

「何で私のことも"マドンナちゃん"って呼ぶんですか?」
「んん?そりゃ当たり前だよ」

桜士郎先輩は私をビシッと指を差し、不敵にくひひ!と笑う。あ、当たり前って…いや、どういう意味?よく分からないんですけど…

「だってこの星月学園にいる女の子は、彼女と君の二人だけなんだよ?だったらどっちにしたって"マドンナちゃん"じゃない」
「……先輩、マドンナの意味分かってます?」

さっきも言ったが、月子先輩のような女神を学園のマドンナとして崇めるのは分かる。でも、上級生の男相手に喧嘩する女(わたし)を人はマドンナとは言わないと思う…。からかってるんですか?と思わずむっと眉をひそめてしまった私に桜士郎先輩は「あらあら、可愛い顔が台無しだよ?」とか言って私の額をつんとこづく。…というか桜士郎先輩、顔が近いです離れて下さい

「…まぁ確かに君は夜久月子(かのじょ)ほど、もてはやされてるわけじゃないけどね。しかも君のこと、一部の男子生徒は恐れてるみたいだし?」
「…分かってるんだったら何で"マドンナちゃん"なんて呼ぶんです?」
「くひひ!だって、だからといって君が"彼女に劣るってる"ってことになるわけじゃないでしょ?」
「!……じゃあ、つまり桜士郎先輩は私と月子先輩は"平等"だと…そう思ってるってことですか?」
「そうだよ?だって君には君の良さがあるじゃない?」

私の良さ…?そんなもの…あるわけない。思わずそう意見した私に桜士郎先輩が「あるんだよそれが。あのマドンナちゃんになくて君だけにあるものが」と負けじという感じで言い返した

「…でも、月子先輩にないものを私が持ってるわけないです」
「そんなことはないよ。実際"それ"を見てくれる人は君の周りにたくさんいるでしょ?」
「……」

…桜士郎先輩の言うことが真実だとして。仮に"それ"に気付いてくれる人がいたんだとしたら、それはー…私と仲良くしてくれる人達のことなんだろう

いつもそばにいてくれる一樹会長、宇宙科(くらす)ですごく仲良く接してくれる翼と梓、私が喧嘩する度に心配してくれたり助太刀してくれる哉太先輩と羊先輩と錫也先輩、
そして"一樹(会長)とは上手くいってるのか?"なんて気にかけてくれる桜士郎先輩と颯斗先輩と四季先輩、そしてそして…部員じゃない私に気さくに話しかけてくれる誉先輩と龍之介先輩と隆文先輩と弥彦先輩と伸也くん、…もちろん星月先生や直獅先生や水嶋先生という教師陣もいつも良くしてくれる

みんながみんなこんな私と一緒にいてくれるから。だから多分…みんなは多少なりとも私を"ただの学園二人目の女子生徒"とだけ見てるのではないと思う。…というか、私はそう思いたい

「……そっか。私はてっきりみんな、素直に男子高校生の本能に従ってるものかと思ってました」
「くひひ!手厳しいねぇ。…まあ他は安心でも、一樹はやらしーこと考えてるかもしれないけど。何と言ってもマドンナちゃんとは付き合ってる身だし?」
「え?いや…一樹会長はそんなこと考えてませんよ」

一樹会長は俺様キャラですけどそういう時はヘタレですから、とへらっと微笑み返す。が、桜士郎先輩は「…それは一樹が我慢してるだけだと思うなァ」と小さく笑いながら答えた。?我慢って…何を?どういうことだろう…

「…でも、やっぱり紛らわしいですねぇ」
「え?何が?」
「マドンナちゃんってあだ名です。桜士郎先輩、やっぱり私のことは雛って呼んで下さい」
「…名前で?」
「?はいもちろんですよ。桜士郎先輩がちゃんと私を"月子先輩と比べる要員"に考えていないことは分かりましたから…。別にあだ名まで平等にして下さる必要はありませんよ」
「…くひひ!了解〜♪」

じゃあこれからよろしくね。雛ちゃん?と呼ばれ返事をしようとした瞬間、ふにっとおでこに柔らかい感触があった。思わず顔がかああっと熱くなるのを感じる

「お、桜士郎先輩…!」
「くひひ、新しい雛ちゃんへの挨拶だよん♪」
「なっ…」
「こらぁぁぁっ!!桜士郎お前、俺の雛に何やってんだァァァ!!」
「「!げっ一樹(会長)…」」
「何で二人揃って嫌な顔すんだよ!?」








空想レッテル


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