「…弥彦先輩っ、部活お疲れ様です!これ、飲み物とタオルですっ」
「!あ…ありがとうな、雛ちゃん」
「い、いいえ気にしないで下さい。私…少しでも弥彦先輩の力になりたいんです。だから…」
「雛ちゃん…」
「…いや、何してんのお前ら」
「あ、恋敵役の犬飼隆文先輩じゃないですか。お疲れ様です」
「勝手な配役してんじゃねーよ」

ビシッと私の頭にチョップを喰らわせた隆文先輩に「な、何するんですか!」と抗議すれば、せせら笑われた。む、むかつくー!なんか隆文先輩って私にだけ態度違う気がする…!

「…で?マジで白鳥達は何してたんだ?」
「弥彦先輩が仮に部活のマネージャーが自分の彼女だったら…みたいなシチュエーションを体験したいって言うので、付き合ってあげたんです」
「はァ?白鳥お前なァ…」
「何だよ犬飼その目は!お前だって一度は憧れるだろ?」
「マネージャー設定にか?」

「タッチのみな●ちゃんは全国の男子の憧れだろ!?」と力説する弥彦先輩に、ああ…そりゃあまぁな…と納得する隆文先輩。…男の子ってよく分からない。謎な生き物だ本当。確かに私もタッチは愛読してたけど

「あれ?犬飼先輩に白鳥先輩…何を議論してるんですか?」
「おお、小熊いたのか。男のロマンについて話してたんだ」
「ろまん?」
「伸也くん…気にしない方がいいよ」

私は無駄に熱く語ろうとする二人を一瞥し、ちょうど練習を終えたばかりの伸也くんに用意していたタオルと飲み物を手渡した。これぞマネージャーごっこのアイテムであると言えるだろう

「伸也くんお疲れ様!練習大変だったね」
「!あ、ありがとう雛さん…」
「あはは、みずくさいなぁ、同じ一年なんだから呼び捨てでいいのに」

そう微笑めば、伸也くんは顔をかああっと赤らめ俯いてしまった。?伸也くん、どうしたんだろ…この弓道場の籠った熱気にやられたかな?

「…ん?何だよ小熊〜お前もしかしてコイツに惚れてんのか?」
「なっ…そうなのか小熊!?」
「!ち、違いますよぅ!からかわないで下さいー!」
「慌てて弁解するなんてますます怪しいっつーの」
「小熊ー!俺の雛ちゃんとラブラブするなんて許せないぞぉぉ!」
「私は弥彦先輩のものじゃありませんけど」

あぁ…伸也くんが弥彦先輩と隆文先輩にもみくちゃにされていく…。可哀想に…と思っていても何も出来ないので、とりあえず持っていた飲み物をゴクゴクと飲み静観した。…あ、これ隆文先輩用に持ってきた飲み物だった。まあいいか、弥彦先輩と伸也くんには渡せたし

「ふぅ…若いっていいですね」
「いや、お前まだ一年生だろ。婆くさいぞ」
「!あ、れ…隆文先輩もう戻って来たんですか」
「あぁ。あとは白鳥が一人で小熊をしめて自供させるらしいからな」
「…可哀想だから伸也くん解放させてあげて下さいよ」

伸也くんは私みたいな人間どうにも思ってないですよ。月子先輩ならともかくと至極当たり前のことを言えば、隆文先輩に「あはは、そりゃお前は周りをよく見れてねーな」と笑われた。?よく見れてない…?意味がよく分からないんですけど…と隆文先輩の顔を私は覗きこんだ。が、そこで私はぴたっと動きを止めてしまう

「…?オ、オイ何だよ。そんなにじっと見てくんなよ」
「……そっか、隆文先輩ってメガネ男子でしたね。今まで忘れてました」
「は?」
「隆文先輩のメガネ…すっごくカッコいいなって。今改めて近くで見てみて、すごく思いました」
「…俺が、じゃなくてメガネが、かよ。失礼なやつ」
「メガネこそが男の子の顔を引き立たせるんですよ。私は全世界の男の子がメガネ掛ければいいと思います」
「何だそれ。…つーか俺のメガネなんか別に普通だろ」
「いいえ、一樹会長のボロそうなメガネとは雲泥の差です」
「…酷ェ言い様だな」

私のメガネ男子説に若干ドン引きらしい隆文先輩は何とも言えないような表情をしていた。…ふ、ふん!私の持論なんだから仕方ないじゃないですか…!そんな隆文先輩から私は了承なしにすらりと黒メガネを奪った

「すみません、ちょっとだけメガネ貸して下さいっ!すぐ返しますから」
「は?ちょっ、待っ…」

「ダメなんです何かムラムラしました」と早口で答え、私は隆文先輩のメガネを装着した。…あ、つーかお前がメガネ掛けるのかよ!とか言うツッコミはなしでお願いします

「って……あれ、?」

メガネを掛けた途端、私の見える世界がぐにゃりと歪んだ。うあ、頭がくらっとする…!これかなり度が強くないですかマジで。思わず足元をふらつかせ倒れそうになった瞬間、私は何か強い力にグイッと引き寄せられた

「!」
「ったく…視力良い奴がメガネなんかすんなよな」
「隆文、先輩…」

顔を上げれば目の前には呆れたような隆文先輩の顔が。そして腰には私をホールドする隆文先輩の長い腕。…倒れる直前に助けてくれたのか。隆文先輩、なんて紳士なんだ。そしてなんて夢小説的展開なんだ

「あ、ありがとうございます、隆文先輩。助かりました」
「……おう」
「!!あーっ!犬飼お前何やってんだぁぁぁ!!」
「こ、こんなところで雛さんを抱き締めるなんて…犬飼先輩大胆です…!」
「「へ?」」

何やら慌てた様子の弥彦先輩と伸也くんに首を傾げた瞬間、後ろからものすごい殺気のようなものを感じた。な、何だこれ…!振り返ればそこにいたのは黒い笑みを浮かべた誉先輩と、いつもの倍ぐらい眉間に皺を寄せた龍之介先輩と、かつて見たことがないぐらいキレ顔の梓がいた。??な、何故みんなそんなに怒ってるんだ…?

「犬飼くん…?」
「犬飼…?」
「犬飼先輩…?」
「……やべえ、俺人生終わったわ」
「へ?」

ー…三人により別の部屋に連れ込まれた隆文先輩のその後を、私は知らない


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犬飼贔屓過ぎた…!でも悔いはない*´`





空想レッテル


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