「ねぇねぇ、雛ちゃん」

「はい?何ですか月子先輩」

「一樹会長と雛ちゃん、どっちが先に告白したの?」

「……はい?」



錫也先輩の作った夜ご飯を食堂で月子先輩と食べた後、私はそのまま月子先輩の部屋にお邪魔していた

ボーッと二人してテレビを見ていた折だ。月子先輩がそんなことを言ってきたのは

…というかここでガールズトークに突入する気なんですか月子先輩



「ええと…一応私から、ですよ」

「ええっそうなんだ!」

「はい。でも最初はフラれちゃっいました」

「ふ、フラれた?雛ちゃんが…?」

「はい」



「このドラマ、なんか思ったよりつまんないなァ。キャストだけか良いのは」なんて思いながら、そう返事をすると

月子先輩はすごく驚いたように「そ、それ本当…?」と問いかけてきた

…この目は"気になるけど聞くに聞けないしどうしよう"的な目だな

まぁ減るもんじゃないし、月子先輩は信頼出来る人だ。話してしまおう



「…私、一樹会長とは星月学園に入る前からの知り合いでして…。告白したのは小学生の時の話なんです」

「!そ、そうなんだ知らなかった…」

「で、私そこで諦めようと思ったんですけど…一樹会長が留年したって聞いて。よくよく話を聞いたら、一樹会長はまた昔と同じことでまだ苦しんでるって分かって…」



そして…その原因はまたも"星詠み"の力で

そりゃこの学園じゃ何人もその力を持ってる人はいるけど…普通はそうじゃない

昔から一樹会長は星詠みの力のせいで、色んな辛さや苦しみを味わってきた

…ある人物に出会ったことで、一樹会長は星詠みの力と折り合いをつけれるようになったらしいけど…

私からしたら、一樹会長は昔から何も変わってない

色々なものを抱えて、たった1人で闘ってる

留年の件を聞いてそう思った

確かに星月学園には仲の良い学友もいるかもしれない。だけど…実際、一樹会長は誰かと共有しきれていない

そう考えたから…私は一樹会長の後を追って、星月学園にやって来た

そして…



「そして…私は一樹会長に改めて言ってやったんです。"私が一樹会長のこと、全部受け止めてやる!"って」

「……雛ちゃん男前…」

「本当ですか?お褒めの言葉ありがとうございます」



えへへと照れ笑いを浮かべたところで、ポケットの中の携帯のバイブが震えていることに気づいた

?誰だろ、こんな時間に…



「月子先輩、電話に出てもいいですか…?」

「うん、大丈夫だよ」

「ありがとうございます」



「もしもし」と電話に出ると聞き慣れた、男にしては高いソプラノ声が聞こえた

…何故この人が私に電話を…?



『…もしもし?雛、聞こえてる?』

「あ…はいはい聞こえてますよ。何のご用ですか?」

『僕、雛にこの前本を貸したでしょ?あれ、明日までに返してほしいんだけど』

「(やべぇ、まだ読み終わってない…)わ、分かりました」

「?雛ちゃん、電話だれなの?」

「羊先輩です」

『!?その声…月子がそこにいるの?』

「あ、いますよ。というか月子先輩の部屋に私が遊びに来たんですけど」

『!……』



まさかそんな事態を予想してなかったのか、慌てふためく羊先輩に私は内心笑みを浮かべた

…そうだ、良いこと考えた



「…羊先輩、」

『な、なに?』

「実は私…今日は月子先輩と一緒に寝るんです」

『え!?』

「(あれ?そんな約束してたっけ…?)」

「ふふっ、羊先輩は月子先輩と一緒に寝たことありますか〜?月子先輩、抱き枕にすると柔らかくて気持ち良いんですよ〜?」

『!っ…』



無論、私はあいにく月子先輩と一緒に寝たことも抱き枕にしたこともない

そして今日わざわざ月子先輩のベッドにお邪魔する気もない

が…まぁ電話の向こう側にいる羊先輩には、それが嘘とも分かるわけがない話で



『っ…雛、君…!』

「あ、じゃあ本は明日天文科の教室まで持っていきますね。おやすみなさい〜」

『!ちょっ、待っー…』


ツーツー……


「…これ、なかなか面白いなァ…」

「?雛ちゃん…?」

「よしっ!哉太先輩にも電話しましょう!」

「え?」


悪気はないですよ、もちろん


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錫也には電話しないよ。彼は大魔王だから←







空想レッテル


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