「…いいのかよ大地。貴重な部員だろ。チームって徐々になってくもんだし…」
「分かってる。けど、あんな状態で練習になるか。…入部を拒否するわけじゃない。でも、反省はしてもらう」
「……」

ほらねと黒い髪の毛をさらりと耳にかきあげ、清水先輩はハァ…とため息をつく。…ひ、日向くん…。あの北山第一中学の、コート上の王様、影山くんが烏野高校に進学したことも驚きだけど。何で日向くんと影山くんがこんなことに…!

「…澤村、ちょっといい?」
「!あれっ清水…どうした?」
「実は、マネージャー希望の一年生がいるんだけど…」
「うほっ!マジですか!?うおお俺たち烏野高校男子バレー部も偉くなりましたね!女子マネ二人とかっ!」
「田中…ちょっと落ち着いて」
「そっかマネージャー希望か、それは珍しいな」
「夏野蜜柑さんよ。ほら、こっちに来て」
「は、はい。失礼しま…」

…って、あれ?この人たちどこかで……?清水先輩に腕を引かれ体育館に踏み入れた私を見て、三人の先輩たちも「……ん?」と首を傾げた

「………あーっ!思い出した!中学総合体育大会にいた、泣き虫中学生ッスよこの子!」
「泣き虫?」
「あ…ああ本当だっ!君、日向と影山の試合を応援してたよね?」
「!!あの時の高校生…!」
「…あーあの日俺のタオルを涙と鼻水でぐちゃぐちゃにした子かあ。懐かしいなあー」
「!?ひっ…そ、その節はすみませんでしたあ…!」
「……なんだ、知り合いだったの」

そうだよ…!日向くんの試合を応援してた時に会った、高校生三人!日向くが試合に負けたのを目の当たりにして、泣きまくってた私を慰めてくれた高校生三人!うわあ…烏野高校の男バレの人達だったんだ…!なんて偶然…!

「わはは!あん時の泣き虫中学生が烏野(うち)のマネージャー希望か!すごい偶然だなオイ!」
「そっかあ、日向とまた同じ学校に進学したんだね」
「は、はい」
「…えっと、それで何で清水はわざわざ俺に確認に?何か問題あったり…?」
「夏野さん、女子バレーボール部と兼部したいんだって。だから澤村に、一応確認」
「えっ…兼部?」
「……」

「んー…練習以外にも遠征試合の時とか、何かと都合合わない時が多々起きそうだけど…」と言葉を止め、澤村キャプテンが私の顔をちらちらと見つつ、顎に手をあて考え込む。…う、やっぱりダメかな。むしがよすぎたかな…

「……夏野さんはさ、何でマネージャーやりたいの?」
「!えっ…?」
「影山と日向の試合の時に精一杯応援してる姿見てさ、バレーボール好きなんだろうなとは思ってたよ。実際そうなんでしょ?」
「は、はい。バレーボールは好きです」
「じゃあ何で男子バレーのマネージャーまでやりたいと思ったの?」
「…え、えっと…」
「結構大変だと思うよ?兼部するの。それにマネなんて雑用だけで直接バレーのほうに関われるわけじゃないし」

ー…それは、そうかもしれない。バレーボールをしたいなら、女バレで部活するだけで十分かもしれない。それにどっちも疎かになっちゃ両方に迷惑がかかってしまうし…

『ー…夏野さんっありがとうね』

けど……

「わ、私…日向くんの力になりたいんです!」
「!……それが、マネもやりたい理由?」
「あ、あと日向くんがバレーボールする姿をずっと近くで見てたいですっ!」

ぐっと澤村キャプテンにそう力強く言い切れば、少しの間沈黙が続く。…え、えっと…?や、やっぱりそんな理由じゃダメで、怒られちゃ…

「ぷっ…あはは!いいよ、そういう真っ直ぐな動機!良いと思う」
「!え…」
「日向のため、かあ。中学の時から高校まで日向追いかけて…すごいなあ、そういうの」
「つーか最近の一年生って本当色々進んでて生意気じゃないッスか…?何なんスか本当」
「田中、お前何に怒ってんの」
「…ま、何にしても君をマネージャーとして認めるよ。ようこそ烏野高校男子バレー部へ」
「…!!」

わ、私がマネージャーに…!嬉しいよ、すごく…!中学の時は女バレやりながら日向くんの練習手伝ってても、肝心なところで力になれなかったから。ー…人材揃えに環境作り。私が手伝えなかったそういう部分の欠陥が、日向くんの中学最後の試合へとつながってしまった。…もっともっと、ちゃんと力になりたい

「いやあー…でも夏野さんは日向に尽くすねえ。青春青春」
「あはは、大地年寄りくさいよ」
「あ、はい!私、"友達"として日向くんの役に立ちたいんです!だからバレーに関してはいっぱい尽くしていきたいです!」
「「「…………えっ???」」」
「えっ?」



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色々鈍感なヒロインさん



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