「(…なんだか、女バレで来た時の大会とはまた雰囲気が違うなあ…)」

ざわざわと賑わう歓声に、シューズの足音やボールの音が各コート響く。…やっぱり、男子バレーと女子バレーだと根本的に何かが違う。パワーやタッパも女子と格段に違うから、ゲームの勢いも迫力も違うし。…す、すごいなあ…!

「(って…そんなことしてる場合じゃない…!日向くん達はどこに…)」
「ちょっと翔ちゃん緊張し過ぎじゃない?」
「お上りさんかよ」
「だ、だってちゃんとした大会初めてだから…!」
「!」

あ、いた!日向くん達。私は二階の観客席からコートのほうに「おーい!日向くーん!」と声を張り上げ、手をぶんぶんと振った

「!夏野さん…!」
「えっ?夏野さん?」
「?イズミン、誰?」
「ほら、うちの中学の女バレの子」

「き、来てくれたんだ…」と驚いたように目を丸くする日向くんに、私は「当たり前だよっ約束したじゃない」とまた声を張り上げ、二階の観客席から身を乗り出した

「うわ〜翔陽ってばやる〜!女の子の応援つきだなんて」
「翔ちゃん部員足りないで俺とコージー助っ人に連れてきたのに、女の子の応援はちゃっかりいるんだもんなあ」
「え、いや、えっと、夏野さんとはそういうんじゃなく…!」
「??」

関向くんと泉くんにからかわれて、真っ赤な顔をする日向くんに首を傾げた。?1人で応援に来ちゃ、まずかったかな?…本当は女子バレー部のみんなも連れてきたかったんだけど、みんな「男子バレー部って…日向と新しい一年生三人だけでしょ?応援にわざわざ行っても…」なんて断られちゃったし…

『…おい、あれ見ろよ』
『あっ北川第一中学じゃん!うわ、噂通りだな』
『選手みんなでかいし威圧感半端ねえ〜…』
「…?」

北川、第一中学…?あ、もしかして…日向くん達の一回戦の相手…?ぞろぞろと青いユニフォームを纏った選手達がコートのほうに入っていく。いつの間にか私のいる二階の応援席も同じジャージを着た、北川第一中学の生徒で多く埋まっていた。…そういえば、聞いたことがある。男子バレーで優勝候補の一校の、北川第一中学。人数も多いし練習も普段からスパルタな強豪校だって…

「(…これは、ちょっと運が悪いかったのでは…)」

まだ、勝てないなんて決まってないけど。一回戦からこんな強豪校と当たるなんて……日向くん達、大丈夫かな。「北一!北一!」なんて応援コールをし始めた北川第一中学の生徒達を横目に、私の頭のなかは不安や心配でいっぱいいっぱいだった

「っ…夏野、さん!」
「…!」

少しいつもより上ずった声に、私はまた視線を一階のコートのほうに戻す。すると日向くんが、こちらをじっと見つめていて。彼は拳をぎゅっと握りしめ、二階の私のほうに突きだした

「が…頑張るから!おれ!」
「!日向くん…」
「おれにはジャンプ力がある!相手がどんなノッポでも、打ち抜いてみせる!」

「それこそー…、小さな巨人みたいに!」と声を張り上げた日向くんに、私はハッと息を飲む。…そうだ。今日は、日向くんの晴れ舞台。そして、私はこの三年間の日向くんの努力を知っている。…ただただ、日向くんには頑張ってほしい。仲間とやるバレーボールを、楽しんでほしい

「ー…うんっ。此処から見てるよ。日向くんのプレー」

だから、頑張って。そう微笑み、私は拳を日向くんに向けて突きだす。…さあ、ここから日向くんにとって初めての試合が始まる



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