「小さな巨人…?」
「そう!たまたま見たんだテレビで!」
「…小さいのに、巨人…?」
「身長が大きい選手がいーっぱいいるコートのなかで、170センチくらいの小さめなエースが1人いてさ!ブァーッて飛んでドガッとスパイク決めてさ!次々と得点稼いでくんだ!」

かなり興奮したように目をキラキラさせて語る日向くんに、私は「そ、そうなんだ…」と意表をつかれたように頷く。…そっか。日向くんが中学になって、1人で男子バレー部に入った理由。それが、"小さな巨人"…

「…いいね。小さな巨人。カッコいい」
「!だ、だよね?カッコいいよね?」
「うん」

身長が小さくても、それを上回るパワーやテクニックがあれば。…小さな巨人っていうのはそういうこと、なのかな。身長が大きい選手を蹴散らしてプレーするその姿は、日向くんの目にどう見えたのだろう。私はスッと拳を日向くんの前に突きだし、へにゃりと微笑んだ

「?夏野さん?」
「…明日の中学総合体育大会で、見たいな」
「へっ?」
「その、小さな巨人みたいに。身長大きい相手を蹴散らしてく日向くんの姿」
「!えっ…!」
「あ、プレッシャーかけたいわけじゃないよ?けど…今まで日向くん、1人で頑張ってきたから。三年最後に、やっと出場出れるようになったんだもん。日向くんの晴れ舞台で見たいなあって」

1人で男子バレー部を続けてきた日向くん。…今年になって一年生が三人入ってきて、そしてバスケ部の泉くんやサッカー部の関向くんに助っ人を頼んで、やっと掴んだ舞台。初めての公式試合。そんな晴れ舞台で、日向くんが活躍してくところが見たいなあって。私は日向くんが頑張ってきた姿、三年間ずっと見てきたから。…日向くんの努力が報われてほしいなって

「…あ、あの」
「ん?」
「い、今までさ。色々ありがとね」
「?日向くん?」
「夏野さん女バレのほうの練習も忙しいのに、色々俺の練習とか付き合ってくれて…すごい、助かってたし嬉しかった。ありがとう。ここまで来れたのも夏野さんのおかげだよ」
「!……」

少し照れ臭そうにそう笑い、日向くんは私の拳にこつんと自分の拳を合わせた。…私こそ、ありがとうって言いたいよ。日向くんが楽しそうにバレーボールする姿、間近に見れて嬉しかったし幸せだったから。…なんだかね、日向くんが頑張ってる姿を見てると、胸の奥がぎゅっと締め付けられるの。…何なんだろう…この感じ。夕焼けに照らされた日向くんの笑顔に、また胸がどくりと高鳴った



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ゆっくり進む、青春っぽいストーリー目指します



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