「ん〜と…」

体育館にて。今日は、男バレの練習のほうに顔を出せる日。なので体育館の隅で、練習をしている男の先輩達を私はこうして眺めている次第だ。元々バレーボールやってたから、先輩達が試合をするってなったら普通に審判の仕事は出来るし。うん、マネージャーとしてちゃんと仕事出来る、はず…!


「(…あとはマネージャーの仕事といったら、選手のサポートとかなんだろうけど)」

まだまだ男バレの方々をよく知らない一年生が生意気に口出すわけにいかないし…そういうのは清水先輩がやってくれるんだろう。けど、口出しとかそんな大それたことしないにしても、ちゃんと男子バレー部の皆のこと知っておきたい…!

「……」

じっと目を凝らし、私は練習する先輩達の動きを観察することに努めた。そしてたまにちらちらと選手名簿と照らし合わせたりする

「(…三年生のポジションWS(ウィングスパイカー)、大地キャプテン。同じく三年生の、ポジションS(セッター)の菅原副キャプテン。それに二年生のWSの田中先輩、縁下先輩。…今いる方々はそれくらいかな)」

あとは一年生のWSの日向くんにSの影山くんの二人がいて。…それぞれ試合になったらもっと特徴的な動きや得意な分野もあるだろうから、表面的にしか分からないけど。とりあえずはそういうところからだんだん把握していかなきゃ…

「うりゃ、」
「!?わわっ…」
「なーにチラチラチラチラ俺たち見ては思案顔してんだ。気が散るだろー」
「す、すみません田中先輩…」
「まっオレの動きに見惚れてたなら話は別だけどなー!わはは!」
「…え、えっと…」
「だから田中ー、あんま一年生困らせちゃダメだって」
「菅原先輩…」

練習の休憩中にはいったらしい田中先輩がさっそく私の肩をバシッと叩く。う、確かにあんなじろじろ見てちゃ練習の妨害だったよね…。私は田中先輩と菅原先輩を前にぺこぺこと頭を下げた

「す、すみません。私もっと先輩のこと知りたくて…」
「えっ!?」
「どういうプレイをするのか、とか…マネージャーとしてこれから出来るだけのことしていきたいし…」
「…あ、ああ。そういう意味か…」
「?」
「…ぷっ、」
「す、スガさん笑わないでくださいよ!ちょっと誤解しただけッス!」

…?選手のこと知っておきたい、なんて生意気だったかな…。もう一度謝罪の言葉を述べれば、田中先輩には「本当だぞ。紛らわし言い方すんな」と怒られ、菅原先輩には「夏野さんのそういう真っ直ぐなところ、俺は良いと思うよ。ちゃんとマネージャーしてるっていうか」なんてニコニコと微笑まれた。!?えっ、ど、どっち…?

「ま、もういい。忘れろ」
「?は、はい」
「ふあ…にしても眠ィなあ〜」
「あ…そっか、菅原先輩も田中先輩も日向くんと影山くんの朝練に参加したんですもんね」
「ああ、アイツら毎朝4時に集合とか言って張り切ってるからよォ〜…」
「あはは、こっちも気合い入れなきゃってなるよな」
「ふあ〜…欠伸が止まらねえ」
「随分眠そうだなお前ら」
「!?」

急に声を掛けてきた大地キャプテンに思わずびくりと肩を跳ねさせる。っ…だ、大地キャプテン…!ヤ、ヤバイ…大地キャプテンは田中先輩と菅原先輩が日向くんと影山くんの朝練に付き合ってること知らないんだ…!大地キャプテンの一言に、田中先輩と菅原先輩が分かりやすいくらいわたわたと焦って言葉を紡いだ

「えっいや…アレかな?勉強のし過ぎッスかね」
「ば、ばか…!お前に限ってそれはないだろ…!(ひそひそ)」
「えええスガさんそんな…!(ひそひそ)」
「?……まあいいや。菅原、田中。それに他の皆も。今日から入部の1年を紹介するよ」
「!」

日向くんと影山くん以外の、新しい入部者。大地キャプテンの後ろから現れたのは、二人。薄茶色の短髪に黒縁眼鏡をかけた男の子と、黒髪の顔にそばかすをつけた男の子。…というか、二人とも身長大きいい…!特に眼鏡の男の子。ひゃ、180センチ以上は確実にあるよね!?影山くんといい、何で今年の一年生はそんなに皆大きいの…!

「月島蛍です。どうも、よろしくお願いします」
「山口忠です」
「…それじゃ簡単な紹介をすませたところで、各自休憩10分はさんで練習に戻ってくれ。月島と山口はとりあえず前半は先輩達に教わりながら同じメニューをこなしてもらう」
「はーい」
「……」

…なんか、穏やかそうな人だなあ二人とも。良かった…日向くんなんて影山くんと既に衝突しちゃってるから。せめて同じ一年生同士仲良くチームプレーが出来ればそれが一番だし…私も少しだけ、話しかけてみようかな。私はエナメルバックを体育館の隅に置いて準備をしはじめる二人のもとに、近付いた

「こ、こんにちは。月島くんに山口くん、だよね?これからよろしくね同じ一年生として」
「…よろしく。君は?マネージャー?」
「うん。1年女子マネージャーの夏野蜜柑です」
「ふーん…」
「?あ、あの?」
「いや、噂で聞いてたんだよね。好きな男追いかけてわざわざ男バレのマネージャーになった女の子がいるらしいって」
「!?」

いや、えっ?えっ?男バレのマネージャーになったってー…わ、私!?それにすっ、好きな男追いかけてって…!動揺する私に対して、月島くんはいかにもおかしそうに口元をゆるめる

「そんな不純な動機でさ、マネージャーの仕事なんてちゃんと出来るの?」
「ちっ、違うよ…!確かに私、日向くんの力になりたいとは思ってたけど、普通にバレーボール好きだし、マネージャーとして烏野高校の男バレを支えたいって思って…!そっそれに好きとかそういうのではなく…!」
「…ぷっ」
「!?」

必死に弁解する私に、月島くんが何故か吹き出す。えっえっ?どういうこと…!?

「いや…冗談のつもりで言ったんだけどね」
「えっ…!」
「あはは。なんかごめんね?」

じょ、冗談…。そっか、私ったら何かそんなすごく必死に言い訳みたいなのしちゃった…。顔真っ赤だし。…う、月島くんに少し悪いことしちゃった。せっかく軽い感じで話しかけてきてくれたのに…

「まあそんな本気で焦るなんて、あながち間違いじゃないみたいだね。その日向くんにお熱でマネージャーの仕事サボって、僕らに迷惑かけるようなことはしないでね?」
「!………」

……やっぱ悪いことなんか私はしてない。月島くんが性格悪いだけだ…。どうしよう、男バレ一年生のうち二人…月島くんと影山くんとは仲良くなれる気がしない…


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ひたすらからかう月島くん




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