コンコン、
「ジョーリィ、いる?」
「ー……ポプリか。何の用だ?」
「パーパから少し頼まれ事をして…」
「モンドに?」
「うん。なんか、私がたまたま通りかかったからって」
「…入れ」
「失礼しまーす…」

うわ、相変わらず薄暗くて不気味な部屋…。しかも何か薬品独特のツーンとした臭いがする…。むっと思わず顔をしかめた私に、ジョーリィはいかにも愉快そうに口元を歪めた

「どうした?」
「……少しくらい換気したら?空気がなんか淀んでる」
「必要ないな。この部屋に毒性のものを発する物質は存在しないのだから」
「でも、こんな閉めきってちゃ身体に悪…」
「人体を害する物質はこの部屋にないと、何度言わせる?」
「………」

ジョーリィはいつも屁理屈ばっか…せっかく心配してあげたのに。いやまあ、正論なんだろうけど。こんな実験室に籠りきりで、よく具合悪くなったりしないもんだ。私はジョーリィに一通の封筒を手渡し、じろっと彼を睨み付けてやった。が、無論効果はない。サングラス割ってやろうかコノヤロー

「指令書、か…」
「言っとくけど、中身は読んでないからね」
「……ふん、まさかファミリー以外の人間に指令書を任せるとは。モンドも無用心だな」
「…私だって一応、ファミリーの一員のつもりなんだけども」
「ただの飯炊き役だろう?」
「その飯炊き役がいないと、皆の生活が成り立たないでしょ?」
「私は食事など必要としない」
「ジョーリィだって、たまには食事も食べるしそれに…コーヒーぐらい飲むでしょ?」
「?コーヒーがどうした?」
「私が美味しい珈琲豆を外から仕入れてあげてるんだから、イコール飯炊き役(わたし)はジョーリィの手間を省くうえで役に立ってるってことだよ?」
「……」

「…相変わらず口が減らないなお前は」と舌打ちを一つし、ジョーリィはもう私とこの話題をする気もなくなったのか指令書を読み込み始めた。…ジョーリィだって人のこと言えないと思うけど。まあいいや。私はそれを見計らい、「じゃあ、私はこれで」と部屋から出ようとした。が、それより素早くジョーリィがドアを片手でバタンと勢いよく閉めた。…いや何で

「ジョ、ジョーリィ?」
「…せっかくだ。飯炊き役のお前にコーヒーでも入れてもらおうか」
「は、はあ?」
「飯炊き役としてファミリーの役に立つ…それがお前の存在意義なんだろう?」
「……ジョーリィが好みのコーヒーなんて、淹れたくない。あんなのコーヒーに対する冒涜だもん」
「ほう?冒涜だと?」
「だって砂糖たっぷりのコーヒーだなんて味もなにもないじゃない。…せっかく良い珈琲豆を仕入れてきてるのに」

口を尖らせる私にジョーリィが「それは申し訳ない」と棒読みで謝罪を述べる。…はあ、大体何でコーヒーにわざわざ砂糖どっぷり入れるんだ。確かに糖分は頭の働きに良いとは言うけど。それとはまた話が違うんじゃ…?最早砂糖だけかじってればいいのに

「…まあいいや。私にはジョーリィの考えなんか理解しきれないし」
「フッ、褒め言葉として受け取っておこうか?」
「どうぞご自由に。…じゃあ、私はこれで…」
「ポプリ、」
「な、なに?」
「お前は私にコーヒーを淹れたくないわけではなく、私と共にいたくないだけだろう?」
「…は、はあ?」
「お前は一刻も早く私の部屋から出ていきたいと願っている。そうだろう?」
「……な、何を言ってるのか分からない」
「お前は前からそうだ。私とはあまり距離をとらないよう意識している、そうだろう?私には丸分かりだ」
「…私がファミリーの人間を避ける理由がどこに?」
「お前自身になくても、お前にその理由を与えた人物がいても不思議ではない」

理路整然に紡ぐジョーリィの言葉はなんとなく、威圧感があって。…ここまで言われたんじゃ私は本心を彼に語らなければいけないだろう。というか、ジョーリィは本当は分かっているんじゃないだろうか

「ー……デビトに」
「ほう、デビトに?」
「デビトに…あまりジョーリィには近付くなって言われたから」
「何故お前がデビトの命令を鵜呑みにする必要性がある?」
「……デビトがあまりに必死な目をしてたから。だから、私はそれだけは絶対に受け入れなきゃって思った
「必死、ねえ……」
「別に、ジョーリィのことは嫌いじゃないよ。素直にスゴいなって尊敬してる。パーパの補佐役として色々頑張ってるし、錬金術だってルカの師なわけだし。…たまに性格悪いなーとか、私たちよりかなり年上のはずなのに大人げないよなーとかは思うけど」
「…それは最早嫌ってると表現したほうが早そうだな」
「昔から小さい頃の私やパーチェ達を徹底的に苛めたおしたのはどこの誰だった?ジョーリィじゃない」

私はジョーリィに負けじと言い返し、ドアのノブに手をかけた

「だから、ジョーリィには悪いけど私はさっさとこの部屋を出たい」
「フ…まあそう焦るな。私のコーヒーでも淹れていけ」
「な、何で!いつもは実験の邪魔だから早く出てけとか言うくせに…」
「ジジィがいい年して嫌がる女引き止めるなんて情けないゼ?」
「!」

この声は…!なんて思った瞬間、ドアがバンと派手に開いた。すぐそこにいた私は当然そのまま額を強打。っ…痛い…!な、何よ何よいきなり開けるだなんてもう…

「デ…デビト!いきなり危ないじゃないの…!おかげで額を打ったじゃんか…!」
「…デビト、お前自らこの部屋を訪ねるなんて珍しいな」
「ハ、多分もう一生に一度のことだゼ。こんな陰気臭い場所にわざわざ入るなんてよ」
「!ちょっ…デビト!?」

グイッと力強くデビトに手を引かれ、私はそのままジョーリィの部屋を後にした。つい振り返り様見たジョーリィの顔は何だか面白がっているようで。…これじゃ逆にデビトが私を連れ出したことも、ジョーリィにとっては計算のうちだったんじゃないかって。そう思わずにはいられなかった


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決して夢主さんはジョーリィが嫌いなわけではないです
ジョーリィフラグも連載のなかで色々立てたいで(ry



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