「ルカが料理は錬金術だ、とかよく言ってたじゃない?ということはポプリも錬金術を使えるの?」

パーチェが最後のラザニアをもぐもぐと口に含みながら、こてりと首を傾げる。…なんだそれ、初耳なんだけど。料理って錬金術なの?横目でルカをじろりと睨み、私は生クリームをスポンジに塗る作業を中断。生クリームの入ったボールを台の上に置いた

「ルカの変な持論に私を巻き込まないで」
「へ、変なってそんな…」
「変でしょ。大体、私がルカやジョーリィみたいに陰気な実験をやるわきゃないでしょうに」
「ハハッ酷い言われようだなァ、ルカ」
「……」
「で、でもポプリの作る料理は美味しいよね。マーサもこの前感心してたよ?ポプリは手際が良いし、助かるって」
「!フェリチータお嬢様にそう言ってもらえるなんて…!私嬉しいですもう死ねる!」
「いや死ぬなヨ生きろ」

お嬢様の頭をなでなでする私に、冷ややかなデビトのツッコミ。だってだって!お嬢様に褒められたんだよ?嬉しいじゃん!そう力説すれば、「ポプリは本当にお嬢大好きっ子だよねールカちゃん以上に」なんてパーチェに笑われた

「いやいやそれは違うよ。私のほうがお嬢様を愛してるからね。ルカなんかより」
「な、何であなたは私に対して厳しいんですか!あなた、私のこと嫌いでしょ!」
「うん?嫌いだよ?」
「ガーン…!!」
「自分から聞いておいて何ショック受けてるんだっつーの」
「ポプリ…」
「?あ…お嬢様、今ドルチェが出来上がりますからね!待ってて下さいよ!」
「ポプリー、俺のラッザーニアは?」
「今食ってたじゃん」
「こんなんじゃ足りないよ〜ポプリ作ってよおかわり」
「…お前なんか後回しだ食欲魔神」

パーチェのために料理を作るとなったら、かなり手間がかかるんだから。本当に何人分作らせれると思ってんだ。早くお嬢様のドルチェを作ってあげよっ!私は片手で卵を割って、そのままボールに入れて溶いた。そしてそれをビスコッティの生地にハケで塗っていく

「どうして卵の黄身をビスコッティに塗るの?」
「こうすると焼き上げた時に焦げ目がつきにくいうえに、生地がパサつかないんです」
「へえ…それは私も知りませんでした」
「ルカは料理の外見ばっか凝るからねえ」
「…何故そこで笑うんですかポプリ」
「バカにしてるからに決まってるじゃない」
「ガーン…!」

私は料理人だけど食えれば何でもいいじゃん派なんだよね…なんて微笑み、私はビスコッティをオーブンのなかに入れた。そしてハイスピードでスポンジに生クリームを塗り、フルーツなんかを盛り付ける

「…はいっ!お嬢様、美味しいドルチェが出来上がりましたよおー。ビスコッティは焼き上がるまで待ってて下さいねー」
「わあ…ありがとう、ポプリ」
「いえいえ!」
「俺らにも何かよこセー!」
「よこせー!」
「ああハイハイ。今パスタ茹でるから。あとお酒はそこの棚にあるから、どうぞご自由に」

やいのやいの抗議するパーチェとデビトにため息をつき、私はまた調理に戻ることに。…ったく、ここは厨房なんだし広間かなんかで大人しく待ってればいいものを…。何で皆ここに集まったんだよ…

「ここは普段私たち使用人なんかが賄いを食べるためのテーブルとイスなんだからね」
「もちろん分かってるよ〜」
「分かってない。アルカナファミリア幹部勢はこんな厨房なんかに来るべきじゃないの」

「お嬢様も、申し付けてくれればドルチェをお部屋までお運びしますからね…?」ともぐもぐとドルチェを頬張るお嬢様の頭を撫で、言い聞かせるように諭す。…ここはアルカナファミリアパーパのための洋館。故に私たち雇われの使用人はパーパの娘であるフェリチータお嬢様を敬う必要がある。下手にお嬢様の手を煩わせるわけにはいかない

「本当ポプリは真面目だよなァ。そのへんの忠誠心はルカちゃんにそっくりだゼ」
「こんなヘタレ男と一緒にしないでよ」
「ヘ、ヘタレって…」
「大体、腹減ったから何か作れだなんていちいち私を呼び出さないでよ。そんなのマーサとかそこにいるヘタレに頼みなさいよ」
「だからヘタレって…!」
「そんなの、"お前"だから頼んでるに決まってんダロ?」
「!わっ…」

パスタを鍋に入れぐつぐつと茹でる私の腰を、デビトが後ろからぎゅっと抱きしめる。ちょ、危ないじゃん…!つーか近い近い…!

「デビト、離れ…」
「俺はお前が好きだからわざわざ指名してやってんだゼ?」
「…へっ?」
「お前みたいな良いオンナがこーんな美味い飯をいとも簡単に作れるなんざ、ますますお前に惚れるしかね…」
「わー!やめろおお耳がぞわぞわする!」

私の耳元でそう囁いたデビトから、私はバッと下がり距離をあけた。そんな私にデビトは「ククッ…お前もまだまだお子ちゃまだなァ?バンビーナと同じで」と意地悪く笑う。む…お前がいきなり抱きついてきたんじゃないか!何なんだ!と非難すれば、「レガーロ男の手の早さをなめるな」と返された。なんだそれ

「でも俺も分かるなあー。ポプリの作る料理は本当に美味しいからさ。俺幸せだよ!毎日自分が生活する館でポプリの作るラッザーニアが食べれて」
「本当に。パーパは良い人材を見つけてくれましたよね。私もポプリにこうして出会えて良かったです」
「……」

な、なんか私褒められてる…?なんだなんだ、いつもと扱いが違うじゃん。いつもなら私にやれ料理を作れだのやれ酒持って来いだのしか言わないくせに…。「……ヘタレ従者と食欲魔神とレガーロ1のエロ男に褒められても、嬉しくないし…」と顔を俯かせれば、「あはは、ポプリは照れ屋さんだなあ〜」なんてパーチェに明るく言われた。うるさいわ

「…ポプリ、」
「?な、何ですかお嬢様」
「私もルカ達と同じだよ。私もポプリにいつも感謝してる。ポプリはいつも優しくしてくれるから…。ありがとう、ポプリ。私、ポプリに出会えて良かった。これからもよろしくね」
「!っ…お嬢様あああああ!私めっちゃ嬉しいです!もう死ねます超幸せ!!」
「「「いや、死ぬなって」」」



−−−−−−
祝!アニメ化!嬉しい2012夏待てない_(:3」∠)_




戻る


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -