フェリチータお嬢様が剣の幹部としてファミリーに入って、もう一年。時が経つのは本当に早いもので。今日も平和でのんびりとした交易都市レガーロで、私はアルカナファミリアのみんなと楽しく暮らしている


「男の子の成長って早いよね」
「あはは、ノヴァのことか?」
「うーん、いやノヴァに限らずさ。…確かにノヴァにいつの間にか身長抜かされたのも衝撃だったけど、リベルタもルカもパーチェもデビトもダンテもジョーリィもアッシュも。みんな様変わりしたというか…私だけ取り残されたみたいというか?」
「お、俺も?」
「うん」
「…えー、そうかあ?そんな変わらなくねえ?ひよこ豆は背が伸びてもひよこ豆のまんまだし、パーチェは相変わらず大食らいだし」
「でも雰囲気がやっぱり違うというか…」
「おーい、リベルタにポプリ!船が来るぞ!」
「あっやべ!ポプリ、行こう」
「あああ待って資料が…!」

さっきダンテから渡された資料を抱え、港の停船場へとリベルタと並んでバタバタと走る。
ー…アルカナファミリアの館に住み込みで料理人をやらせてもらって今年で二十年め。ファミリーの食事の用意や下働き雑用、それに食材の仕入れなんかを今まではやっていたけど、最近はそれも変わってきて。
今はたまーに色んなセリエのヘルプに駆り出されることもあったりする。人手が云々というよりは「二十年もファミリーにいる年長者ってことで勝手が分かるし、俺としても信頼出来るから」ってパーパの一言あって各幹部にこき使われてるわけだけど!

「おっ来たな。じゃあ各自配置に着け。船からもうすぐドッと人が島に降りてくるからな」
「ポプリ、しっかりな」
「えっと?私は船から降りてくる人に名前を聞いて、この乗船員リストと照らし合わせればいいんだよね?」
「ああ。もし不法乗船してたやつがいたら俺らに知らせてくれ。そんなやつをレガーロに入れさせるわけにいかねえからな」
「どうすんの?」
「拳骨お見舞いしてからそのままお帰りいただくさ。小舟に縛り付けて」
「…諜報部ってさ、レガーロの出入口番のわりにやること乱暴だよね。パッと見柄悪いし。それやるとレガーロ初めて来た人に最悪な印象だよ?」
「頼りになると言え。ほら、いーからさっさと行けって。リベルタはもう仕事してるぞ」
「しかも人使い荒いし…!」
「この諜報部で女の子扱いはされないと思え〜」

諜報部の皆にぐいぐいと背中を押されて、停船所の隅に書類片手に立つ。…諜報部って重労働多いよなあ。流石にガタイの良い海の男達ばかりが配属されてるだけある。…次にダンテにヘルプ頼まれてもちょっと考えよ…
ため息一つ、パラパラと入船者リストを捲り目を通す。えーっと、この船はどこから来てるんだろ…

「…のるでぃあ…?」

生憎知らない地名だ。結構遠くから来たのだろうか。それに、書類には「商いのためレガーロへ入国申請」と書いてある。
…何かを売り込みに来たのかな。それともレガーロの産物とかを買い入れに…?ノルドの特産物を売り込みに来たとかなら、すっごく嬉しいんだけどなあ…。レガーロは新鮮な魚には富んでるし温暖だから野菜果実には困らないけど、土地は狭いから肉とか手に入れにくいし…

「ふう〜、やっと着いたぜ!」
「案外長い船旅だったな」
「!」

来た!ノルドの商人だ!
ぐっと手のひらを握りしめ、ズイッと船から降りてきた青年達の前に出る

「チャ、チャオ!レガーロにようこそ」
「?…君は?」
「レガーロ島の自警団アルカナファミリアの者です。入島検査にご協力下さい」
「入島検査あ?なんだよ、俺らノルドの商人を悪者扱いか?」
「…よせ、テオ」
「だってよォコイツがいきなり…」
「ふ、不快感を与えたなら謝ります。けれど、こちらとしてもあなた方にに楽しく快適な時間をレガーロで過ごして頂きたいです。入島検査の身分証明はそのために必要なものだと思います」
「……生意気な女だな」
「こら、やめなさいテオ。失礼しましたお嬢さん、こちらのルールに従いましょう。それは私たちがレガーロで商いをするのに必要なことでしょうから…」
「チッ、ウィルが言うなら仕方ねーな…」
「…え、ええと。こちらに名前を記入お願いします。あと鞄を開けて中身を見せて下さい」

長い白髪のお兄さんに諭され、黒髪メッシュの男の子は渋々頷きつつ、何故か私をじろりと睨み付ける。…わ、私だって仕事なんだから仕方ないじゃない…!怖さのあまり俯く私に、白髪のお兄さんの隣にいた小さな女の子が「ねえ、」と呼び掛けてきた。
…というかこの子が着てるの、マンマが着てるキモノ?だよね…?珍しいなあ

「…ここにいるのはアルカナファミリアの、諜報部?」
「えっ?あ、ええそうです」
「アルカナファミリアという組織は、確かファミリーのボスの娘以外に女性はいないと聞いていたが…君みたいな子が諜報部にいたんだな」
「え」

女の子の会話を引き継いだ長身で切れ目の青年に、つい目を丸くしてしまう。…何でフェリチータお嬢さまのこと…

「あなた達一体…」
「ふふ…はい、記入終わりましたよ。荷物も手持ちはこれだけです」
「!あ、ありがとうございます……はい、大丈夫です」
「ほら、通せよ!もういいだろ?」
「…協力アリガトウゴザイマシター」
「うぜえ!俺やっぱりコイツ気にくわねえ!」
「落ち着いてテオ…」
「全く…レガーロに着いていきなりこうじゃ思いやられるな」
「ふふっ、では行こうか?ネーヴェも、セラフィーノも」
「ああ」

色々キャラ立ち過ぎの四人組はそのまま連れだって歩いていく。…というか、アルカナファミリアに縁ある人達とかなのかな。はぐらかされたけど、もしや私が入島検査する必要なかったのでは…
とりあえず、私は四人組の背中に向かって「あ、あのー!」と大きく叫んだ

「楽しいレガーロでの商いをー!レガーロの食べ物は美味しいんで是非買ってって下さいねー!あと、出来れば肉売ってって下さい!肉!」
「「「「(………肉?)」」」」


ー…レガーロ島に来て初めて出会った少女。黒いスーツ姿の自称アルカナファミリア諜報部の人間の奇妙な挙動に、ノルドの商人の彼らがいきなり度肝を抜かれたという事実は、振り返った四人組の表情を見れば誰にも明らかであった


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アルカナ2支援!キャラ捏造すみません!



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