◎原作共通√のお話


「こっちです!お嬢様早く早くっ」
「う、うん…」
「……ルカのやつ、はしゃぎやがってうぜェったらありゃしねェ」
「同じく」
「あはは、まあ収穫日だからねえ」
「いやだからって…」
「ほらほらポプリも、そんな怖い顔しないでさ」

「にこっと笑ってみなって。ポプリの可愛い顔が台無しだよ?」なんて微笑むパーチェに、「…え、あ、うん。そっか…」なんて曖昧に返し先頭を歩くルカを睨み付けていれば、デビトに頭をチョップされた。痛い

「お前なァ…そういうところ直せって」
「へっ?」
「素直にありがとうって笑えばいいだろ」
「??でも…レガーロ男のそういう言葉には耳タコだし。誰彼構わず口説き文句使ってるわけだし…」
「えー?俺は本当にポプリの笑顔は可愛いと思ってるよー」
「だからパーチェ、別にいいよお世辞は。そういうのは本当に好きな女の子に言ってあげなよ」
「…ありゃ、」
「ハハッ、これは手厳しいなァ。パーチェ」

というか、こんな昔からの気の知れた仲間の私にそんなこと言う必要ないのに…。私は「それに、今笑ってられる状況じゃないから」とパーチェに一言呟き、隣を歩いていたお嬢様のほうを振り向いた

「…フェリチータお嬢様、大丈夫ですか?疲れてません?」
「うん、大丈夫だよ」
「そうですか、良かった。まだ結構歩くので、疲れたら言って下さいね?パーチェがおぶるんで」
「あはは、そこは俺なんだね」
「それだったら役得だなァ、パーチェ?バンビーナは軽いしな」
「はあ…にしても、せっかくのお嬢様とのお出かけがルカの薬草園の収穫なんて…」

大体、フェリチータお嬢様にまで薬草園の収穫を頼むとは…ルカ、許すまじ。私たちから少し離れた場所で気分良さそうに口笛をふくルカに、私はムッと眉をひそめた。…そう、今日は収穫日。毎年この時期になると、私とデビトとパーチェはルカの手伝いとして、森の中に建てた薬草園へと駆り出されるのだ。おかげで軽く1日は予定が潰れるし、すごく疲れる

「あ…お嬢様、そこ足元に気をつけて下さいね。木の根元が伸びてきてるので転びやすいですよ」
「うん。…ポプリ達は毎年こんな森の奥まで来てるんだね…」
「ルカのやつ、ジョーリィのジジィに邪魔されねーようにって、わざわざこんな山奥に小さな薬草園を建てたからなァ」
「そうそう。ルカの錬金術と原始的なトリックを駆使した秘密基地みたいなものなんだよね」
「そうなんだ…。だからこんなファミリーの館から遠くに…」
「うあー…疲れた。まだ遠いなあ道が険しいなあ」
「ああ、ポプリは久しぶりに外に出たもんね」
「いくら厨房に入り浸って仕事してるからって、館に引きこもりは良くないゼ?」
「………」

引きこもりじゃないから。両隣にいたデビトとパーチェに肘鉄を軽くくらわせ、私はひたすら歩く。…別に、買い出しに行く時は外に出るもん。あーもう本気で面倒くさいなあ。大体、ルカのやつに働かせられるってのが納得いかない。ブスッとむくれた表情をする私にまたパーチェとデビトが何か言っていたが…うん、もういいです本当

「三人とも早く〜もうすぐですよ」
「ほーい!分かったって!」
「……」
「…あの、ポプリ。そんなに私を睨まないでもらえますか?あなただって、目的は同じでしょう?」
「えっ?それ…どういうこと?」

こてりと首を傾げるお嬢様に私は「私はルカのために来たわけじゃないんですよ」と笑顔で即答すれば、前にいたルカが「……あなたは本気で私に敵意剥き出しですよね…」なんて手で顔を覆う。うわ、落ち込んじゃったよ…昔から私たちはこういうノリだったじゃないか。繊細だなあ

「ポプリ?」
「あー…つまりですね、私は料理人としてルカの薬草園の薬草が必要なんです」
「料理に使うの?」
「ええ。例えば、フェリチータお嬢様の大好きなドルチェとか。材料として使うだけじゃなく、ただ乗せるだけでも風味が変わりますしね」
「あとは特製ラッザーニアの味付けとかね!」
「あとは特製カクテルの風味付けとかな」
「あー分かった分かった。明日あたり作るよ…」
「わーい!ポプリのお手製ラッザーニア!」

まあもちろんフェリチータお嬢様のドルチェを作った後でね。…ふう。そのためには薬草の収穫、頑張らなきゃな。「ほら、ルカ行こうよ。せっかくなら早く終わらして、お嬢様とゆっくりお茶でもしよう」と促し、私はルカの腕を引っ張り歩を前に進めた



戻る


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -