「ふあ…疲れたあー…」

数々のトラップをくぐり抜け、やっと辿り着いた薬草園。この森に来てからどれだけ時間がかかったんだろう…。やっぱ普段からもっと運動しなきゃダメだなあ。少し反省。腰をぽんぽんと叩き、私はグーっと伸びを一つした。そんなところで、ルカの明るい声が響く

「さあ、片っ端から収穫しましょう!頑張りましょうね!」



**



「…パーチェ、それは分類が違います」
「へっ?あ、そうだっけ…?」
「バカ。いい加減覚えろよな。そっちのは麻酔用だろーが」
「デビト…色は同じですが、麻酔用はそっちの紫色の薬草ですよ」
「ぷぷぷ…デビトも間違えてやんのー!」
「うっせェ、ガキか」

バシッ。さっきより大分強い力で頭をデビトに叩かれた。痛い…!何で…!本当のこと言っただけなのに!

「う、女の子に手を上げるなんてレガーロ男の風上にも置けないぞ…!」
「こういう的だけシニョーラぶるんじゃねェ。…大体、お前は薬草区別出来んのかヨ」
「で、出来るよ!例えば、この青緑っぽいのと黄色がかった薬草2つは…」
「2つは?」
「2つはー……食べれる!で、あっちの紫色のと濃い赤茶色の薬草は食べれない!」
「……正解ですけどポプリらしい判断基準ですね」
「でもそれが一番重要だよねー!それを使ってポプリはラッザーニアを作るわけだし!」

ふふん、これでも料理人の端くれだからね!薬草について全問正解できたことに満足げに微笑み、私は薬草をせっせと仕分ける作業に移る。…もちろん、自分で貰う分も計算に入れて。ふふっパーチェじゃないけど、この薬草を使って早く料理がしたいなー!すっごく楽しみ!

「ルカ、私は何をすればいいの?」
「お嬢様はデビト達と少し違うことをお願いしようかと思います」
「違うことを?」
「へっ?ルカあんた、フェリチータお嬢様に何させる気?」
「えっとですね、布の上にこう…葉を一枚一枚広げながら並べて、布一杯に並べたら、新しい布を広げてまた同じに…という作業をやっていただきたいんです」
「うわあ……俺はそういう作業無理だ」
「だからバンビーナに頼んでるんだろ?」
「フェリチータお嬢様は手先が器用だし何に対しても丁寧ですもんね!うわあお嬢様尊敬します!」
「急にテンションあげんなヨ」

バシッ。デビトにまた同じように頭を叩かれ、私は舌打ちを一つしつつデビトを睨む。が、デビトにそれで喧嘩を売ってもせせら笑われるのがオチだ。…薬草もらうまでは我慢我慢。私はそのまま作業に戻るという大人な対応をすることを選び、薬草をプチプチと摘み始めた。フェリチータお嬢様も、どうやら作業を黙々と開始しているようだ

「…ま、この作業にはかなりの集中力が要るのは確かだけどな。パーチェお前、バンビーナの手元が狂うようなこと言うなよ?」
「へっ?そんなの、俺が言うはずないじゃん!ねー、お嬢?」
「(フェリチータお嬢様作業してんだから話題ふるんじゃないよ…パーチェはやっぱりアホだ)」
「俺はいつだってーお嬢のことを黙って受け止めるティラミスのような存在だあ!」
「(なんだそれ)」
「ティラミスゥ?…そりゃお嬢を甘い言葉で包み込んでやるっていうお前なりの口説き文句か?」
「そうそう!お嬢だってティラミスは大好きでしょ?」
「…意味が分かりません。パーチェ、口を動かす暇があるなら、手を動かして下さい」
「やだやだ、余裕のない男なんてみっともないぜェ?ルカ」
「(…なんだこの流れ)」
「……」
「ああっ、ほらルカちゃん!落ち込むなって〜!」
バシッ
「!?わっ…」
「!お嬢様危なっ…」

勢いよく馬鹿力でパーチェがルカの背中を押したことにより、ルカはよろりとふらつき、そのままフェリチータお嬢様の方へと倒れこんでしまった。…結果、お嬢様が今までやっていた薬草並べの作業も中断。むしろ薬草がシートからあちこちに散らばってしまった

「うお…今までの作業が全部やり直しかァ〜…?」
「す、すみませんお嬢様!お怪我はありませんか?」
「ご、ごごごめんお嬢!ちょっと強く叩き過ぎちゃったかも…!」
「……」

…フェリチータお嬢様が蹴りの体制に入ってる。いや、まあ当然だよね。お嬢様、思う存分やっちゃってください

「ー…どうなるか、分かってるよね?」
「「!!」」
ドガッ!
「うごぉっ!?」
「ぐはっ!」
「ハハッ、バンビーナの蹴りはいつ見ても見事だねェ」
「……私来年からは絶対薬草園来ないわ」


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懲りたらしいヒロインさん



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