◎昔の話


「モンド…やっぱり俺は反対だ。こんな小さな子に厨房を任せるなんて…」
「厨房と言っても立派なファミリーの館の機能の一つだ。それをいきなり異国の地で拾ってきた子供に任せるのか?モンド」
「……」

ー…ほら、やっぱり言ったじゃないか。そう心のなかで言って私はむっと眉をひそめた。私を拾ってくれた男、モンドはアルカナファミリアのトップに立つ男なのだという。このレガーロという土地に連れてきてくれたのには感謝する。けど、いきなり彼の運営する館の調理人になれるとは思ってなかった

「だが、ポプリの作る料理は絶品だ!手際もいい!なに、ちゃんとファミリーの厨房を任せられる人材だ。ダンテ、ジョーリィ、ポプリのことは俺が保証する!」
「だがなモンド…この子はまだ5歳もいかない子供だぞ?こんな早くから働かせるというのも可哀想だろう?」
「…あ、あの」
「ん?」
「かわいそう、ではないです。わたし、ほかにいくとこもないし…」

…そう、このレガーロ島に私の居場所はない。から、いくらこのモンドさんが唐突に提案したことだとしても、私はそれに乗っからなければならない。働き口もなく住む場所もなければ、私はまた前にいた村と同じ。レガーロ島でものたれ死ぬだけだ

「まえすんでたところでも、わたし、"こじいん"でみんなのりょーりつくってたし…!ちゃんとりょーりにん、できます!」
「だがなァ…」
「はたらかせてください!おねがいします!」
「…ククッ、この年で社会の成り立ちを理解しているとは。いやはや、利発なお嬢さんだな。以前の生活環境が余程影響を与えたらしい」
「しかしこんな小さな子どもを働かせると知れたら、我々ファミリーは周りから何を言われるか分から…」
「あら、いいんじゃないかしら」
「!スミレ!」
「…?」

だれ…?黒い長い髪の毛を垂らし、見慣れない服を着た女性。…どうやら彼女はそれなりの身分の人間らしい。大男もサングラスの男も、どこか彼女の登場に驚いて萎縮してる

「私が六歳のときにはもう働き始めていたわよ?問題ないわ」
「…スミレ。こいつは見知らぬ異国で拾ってきた子供だぞ?何故肩を持つ?」
「同じ女だからよ。今は女だって何事にも強く立ち向かっていかなければ生きていけないわ」

「それにー…とても純粋な目をしている。この子がどういう人間か、それだけで分かるわ」と微笑み、彼女は私の頭を撫でた。…?な、なんか誉められた?そして味方されてる…?というか近くで見ると本当に綺麗な人…

「……ファミリーのトップに立つ人間二人がそう言うなら仕方ないな。我々は従うしかない」
「…そうだな」
「ふふっ、良かったわね」
「!あ、ありがとうございます」
「失礼します、パーパ。パーパ宛の手紙を預かって…」
「?」

突然部屋に入ってきた、男の子。黒い癖っ毛が目立つ。…私よりか少しだけ年上なんじゃないかな、と思う。なんか大人っぽいもん

「す、すみません。お取り込み中でしたか…」
「おお!ちょうどいいルカ!今度から我がアルカナファミリアの館の料理人になった、ポプリだ。仲良くしてやってくれ!」
「!り、料理人…?」
「ポプリ、ルカの他にもあなたと同じ年頃の子は何人もいるわ。だから安心してちょうだい?」
「は、はい」
「ルカ、ポプリを教会に連れていってあげてくれ。カテリーナ含め教会の子ども達にポプリを紹介してやってほしい」
「えっ…?あ…、はい。分かりました」

「じゃあ、行きましょうか。案内します」と子どもらしくない、大人びた微笑みを浮かべた彼は、そのまま私の前を先導していく。…彼も、そのアルカナファミリアの一員なのだろうか。モンドさんからの信頼はあるみたいだったが。ー…モンドさんとスミレさんと、ええと…ダンテさんとジョーリィさん、だっけ?それに…ルカ、さん。新たな出会いを一つ一つ思い刻み、私はぎゅっと自分の手を握りしめた


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ファミリーとの出会い



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