「え〜…またフられたの?」
「……はい」

金貨が経営するイシス・レガーロの隣にあるバールにて。私は机に突っ伏すジェルミに「ジェルミもう今月で失恋すんの何回めよ…」なんてため息をついた

「…そんなん言われても〜……」
「まあいいや。今日は私がおごってあげるからさ、じゃんじゃん飲みなよ」
「!姉御…!」
「その呼び方はやめて」

デビトの仕事場イシスレガーロには何回も訪れているからか、比較的私は金貨のセリエの人達と仲がいい。…けど、ジェルミはなんか特別。よくこうやって慰めてあげてるし、悩み相談も受ける。から、なんとなく弟?ができた気分で私としては嬉しいけど…

「にしても、レガーロ男は積極的だなあ。そんな毎回プロポーズだなんのって…」
「…ポプリさんは好きな人とかいないんスか?」
「んー…いない、かな。よく分からないけど」
「わ、分からないって…」
「だって恋愛とか、したことないから分からないんだもん」
「…ふーん…」

「…カポも苦労するなあ、」なんて染々と呟いたジェルミに、「?かぽ?って…デビト?デビトがどうかしたの?」と首を傾げれば、「い、いや何でもないです」と焦ったように返された。?よく分からない…。というか、何故に恋ばな?あんま恋ばなとか聞く分にはいいけど、話すのはなあ…ネタがないし。私はお酒をぐびぐびと飲み干し、近くにいた店員におかわりを頼んだ

「…ポプリさんのが飲んでるッスね」
「ジェルミも飲みなよ。嫌なこと忘れるにはお酒が一番だよ〜」
「あはは…そうッスね」

苦笑いを浮かべたジェルミはごくごくと控えめにお酒を喉に流し込む。…もう、もっと豪快に飲んじゃえばいいのに。男気が足りないぞ!ジェルミったら

「…あ、そうだ」
「ん?」
「じゃあ例えば、うちのカポとパーチェさんとルカさんだったら誰と結婚したいですか?」
「……は?」

?なに、ジェルミもう酒が回っちゃったの?意味が分からないと目を細めれば、「いや例えばの話ッスよ。三人とも仲良いからそういう話もあるかなって…」なんて少し控えめに返された。そういう話、とか?…ないなあ。むしろ私はあいつらに女扱いをされていない

「結婚とか、考えたこともないなあ」
「ま、まあまあ例えばの話ですし…」
「例えば、ねえ…」
「パーチェさんとかどうなんスか?パーチェさんはポプリさんの料理をいつも美味しく食べてくれてますよね?」
「…まあ、パーチェはそうだね。料理に関しては作り甲斐があるかな。いつも完食してくれるし…あー確かに。家事をやるうえじゃパーチェはいいかも。ちょっと尽くす気になれる」

…なんかそう考えると面白いかも。パーチェだけじゃなくて私が誰かと結婚するなんてあり得ないけど。どんなのかなあって想像するとちょっと楽しい

「でもパーチェはお金に対して無頓着だからなあ…一緒に生活してける自信はないかも」
「あはは…ポプリさん相変わらず現実的ッスね」
「次は、じゃあルカね。ルカが旦那さんだったらー…」
「だったら?」
「……やっぱ想像つかないや。ルカはお嬢様大好き人間だから、一生結婚とかしなそう。強いて言うなら、ルカはお嫁さんもらってもフェリチータお嬢様の従者続けそうだなあ。それで奥さんにキレられてルカが"え?何でですか?"みたいなこと言うなきっと」
「…あーそれは分かるッス…」

というか、よく考えたらルカっていい歳だよね…本当ならお嬢様離れして早くお嫁さんもらうべき年齢というか。私やパーチェやデビトもあと少ししたら、世間的に同じように身を固めなきゃだけど。私はー…どうなんだろ。もしかしたら一生結婚しないかもなあ…まあレガーロ島でファミリーのみんなと一緒にいれれば幸せなんだけどね

「…カポは」
「えっ?」
「ポプリさん、カポのことはどうなんですか?」
「?結婚したらどうなるか、みたいなこと?」
「あ、ああ…まあそうッス…」
「うーん…デビトかあ」

デビトと私が結婚したら……かあ。うーん…

「ー…それが一番かな」
「えっ?」
「デビトと結婚が、私にとって一番ベストかなって」
「えっ!?」

ガタッと椅子から立ち上がったジェルミに、私は「?どしたの?」なんて首を傾げた

「だ、だって…!それってつまりカポのことが好……っ、いや、ポプリさん理由はな、何なんスか?」
「え、だって結婚したらデビトのこと縛れそうじゃない?」
「え?」

ぽかんと口を開けたまま疑問符を浮かべるジェルミに、私は「大丈夫かジェルミー?」なんて手をひらひらさせた

「まあ、あれだよ。監視しておきたいってのもあるというか…。デビトって女の人が大好きだからいつもフラフラするし、よくふらっと自由気儘に姿消して単独行動とるし、食事とかも好きな時に好きなもの食べるから健康管理も心配だし、睡眠もあんま取らないような人だし、それに…」
「…ポプリさんって、カポのこと普段からよく考えてるんスねえ」
「!?は、はあ?」
「だってそんだけ気にしてるってことは…ぐほっ!」
「おいおいジェルミ、お前がオンナをからかうなんざ十年早いゼ?」
「!デ、デビト!?」

ジェルミを床へ蹴り飛ばし、デビトは代わりに今までジェルミが座っていた椅子へと腰を掛ける。い…いやいやいや何この流れ。向かい側に座り早くも酒を飲むデビトに、私は口を開いた

「ちょ、ちょっとデビト!あんた何やって…」
「お前俺のこと縛りたいんだって?」
「!?」

ま、まさかさっきの会話聞いて…!焦る私を見てデビトは「いやあそんなにポプリに愛されてるだなんて知らなかったなァ」なんて愉快そうに口元をゆるめる。っ…本当、こいつは…!いきなり現れたと思ったらいつも人の揚げ足ばっか取って…!

「デッ…デビトのばか!」
「おっと、」
「!」

ぱしっ。デビトを叩こうとしたところを、不意に手首を掴まれ、逆に私は引っ張られる形に。な、なななっ…!

「おー相変わらず手が早いなポプリは。バンビーナは足出すのが早ェし…うちのファミリーの女は気の強いシニョリーナばっかだな」
「は、離してよ…!」
「嫌なこった。ポプリ、このまま俺と近くのリストランテでシエスタすんぞ」
「は、はあ?」
「俺を縛りたいんだろ?なら、こうして引っ付いていたいってお前の望みを叶えてやるって」

「今日1日はお前に縛られてやるよ。暇だしな。デートといこうぜ」なんて言うデビトに、私は引っ張られるがまま。…な、何かデビト今日に限って変。よく分からない。ー…二人で、とかそんなの言ったことないくせに。いつもフラフラ逃げてばっかのくせに

「………リストランテのはデビトのおごりだからね」
「俺がデートで女に金払わせるわけねーだろ。つーかお前は相変わらず素直じゃねーな。ジェルミの前じゃペラペラ素直に喋るくせして」
「す、素直じゃないのはお互い様でしょ…!」



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こんな関係性。女の子扱いの上手いデビトさんも夢主さんにはちょっと苦戦する感じ



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